【専門家の知恵】会社の中で、心理系資格者が活躍するための「3つの場面」とそのポイント

公開日:2024年1月19日

 

会社の中で、心理系資格者が活躍するための「3つの場面」とそのポイント


<ごとう人事労務事務所 後藤和之/PSR会員>

 

心理系資格の代表的なものとして、公認心理士・臨床心理士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラーなどがあります。これらの資格以外にも、心理に関して理解を深めたいと考えている方も多いことから、さまざまな心理に関する資格や学習機会があります。

今回は、会社として心理系資格者を活用するためのポイントを‘’3つの場面‘’に分けて解説します。

 

【場面①】1人の従業員を支える時(メンタルヘルス など)

 ≪ポイント≫

心理系資格者が、チームの一員として、従業員の『話を聴くこと』

そして他のチームメンバーが、従業員自らの力で歩むことができる『環境をつくること』

悩みを抱えていても「私生活のことは会社に相談できない」「仕事を円滑に進める上で、自らの悩みを打ち明けるべきではい」など、会社の中の誰かに相談することは実際にハードルが高いことかもしれません。その結果、ストレスを抱えて、メンタルヘルスを悪化させることにもなりかねません。

もし、心理系資格者が話を聴く相談窓口があれば、従業員が今まで我慢してきたことを打ち明けることができ、その悩みを共感してもらえることができます。心理系資格者が、直接、問題を解決する場面は限られるかもしれませんが、従業員が心理系資格者に話を聴いてもらうことでスッキリとした気持ちになり、新たな一歩を踏み出すことができる。その大事な一歩を後押しするのが、心理系資格者の大きな役割と言えます。

しかし、その大事な一歩の先にある職場環境が何も変わっていなければ、再びメンタルヘルスを悪化させることになります。つまり、心理系資格者の他に、従業員自らの力で歩むことができる環境をつくる役割が必要になります。それは、上司・同僚・人事管理部門・外部専門家など状況によって異なります。

相談内容に応じ、守秘義務を遵守することに留意しながら、心理系資格者が会社の他のメンバーと一緒になって、従業員が自らの力で歩み続けることができるようサポートすることが大切になります。

 

【場面②】職場で問題が生じた時(ハラスメント など)

 ≪ポイント≫

「事実を把握」するため、心理系資格者が、相手に『寄り添う』役割を担うことができる立場にあるか

心理系資格者が持つ大きな強みは、相手の気持ちに寄り添う専門性を持っていることです。

寄り添ってもらうことで相談者に「安心感」が生まれます。この「安心感」が、ハラスメントなど職場で起きた問題を解決する上で重要な要素になっていきます。

相談する従業員(ハラスメントの被害にあった従業員など)が「安心感」を持つことができなければ、事実を話すことができないかもしれません。

例えば「事実を話したら、不利な扱いを受けてしまうのではないか」ということを従業員が感じてしまう場合です。事実が分かれば会社として早期に解決できるようなことも、問題が大きくなって初めてその事実が明るみに出ることも考えられます。また、会社として事実を把握することができなければ、問題を解決する糸口をつかむこともできません。

そして、相談を受ける心理系資格者が経営者に近い立場であったり、ハラスメントか否かを判断するような立場であったりすれば、相手の気持ちに寄り添う専門性を発揮することが難しくなります。

心理系資格者が、相談者との間に利害関係が生まれない立場を確保することが大切になります。

 

【場面③】従業員のモチベーションをさらに高める時(キャリア形成 など)

 ≪ポイント≫

心理系資格者が、従業員のモチベーションを高め、会社の生産性向上へ

それが、メンタルヘルス対策・ハラスメント防止にもつながっていく

ここまではメンタルヘルス・ハラスメントなど「何か問題を起こった時」を紹介しました。しかし「何か問題が起こった時」だけではなく、『何か問題が起こる前』にも心理系資格者が活躍する場面があります。

その代表的なものがキャリアコンサルティングなど、相談者が『キャリア形成』を考える場面です。

心理系資格者の力を得て『従業員が将来のキャリアを描くこと』。

それは、従業員が日々の忙しさから一歩離れ、心理系資格者との対話を通じ、培ってきたキャリアを振り返ることにより描くことができます。さらに、そのキャリア像を実現するために「自らの能力を高めていきたい」「能力を高め、会社へ貢献していきたい」といった思いが従業員のモチベーションを高め、会社としても適材適所に人事を配置することで、生産性向上へとつながっていきます。

そして、さらに必要なことは「従業員が描く自らのキャリア」と「会社がその従業員へ期待すること」をできる限り一致させることです。

それが一致しなければ、従業員のモチベーションが上がらないだけでなく、ストレスを抱えることにもなり、メンタルヘルスの悪化・ハラスメントの発生などの問題につながります。さらには、従業員が会社に対する期待を抱くことができなければ、優秀な人材が流出することにもなりかねません。

心理系資格者がカウンセリングにより「従業員のキャリアを描く」役割を担った後に、管理者が従業員へ面談を行うなど、会社の中で仕組みをつくることが大切になります。

 

心理系資格者が、会社にいない場合は?

以上3つの場面をご紹介しましたが、心理系資格を持っている従業員がいない会社も多いと思います。

しかし、そのような資格がなくても、従業員個人の特性として「話を聴くことが上手な人」「相手の気持ちに寄り添うことができる人」「相手のモチベーションを高める言葉掛けができる人」などがいれば、ぜひそれぞれの場面に応じた役割を担ってもらいましょう。

そして、その方たちが心理系資格を取得すれば、会社の中でより活躍できることへとつながっていきます。

 

プロフィール 

後藤和之
ごとう人事労務事務所(https://gtjrj-hp.com
社会福祉士・社会保険労務士 
 

昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの業務に携わるとともに、福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。特定社会保険労務士として、人事労務に関する中小企業へのコンサルタントだけでなく、研修講師・執筆など幅広い活動を通じて、“誰もが働きやすい職場環境”を広げるための事業を展開している。

監修:退職後の社会保険と税の手続き(株式会社ブレインコンサルティングオフィス)

 

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