<社会保険労務士法人出口事務所 加藤秀幸/PSR会員>
人事業務を効率的かつ効果的に進めていくうえで、PCを使わない日はありません。
また、人事関連の便利なシステムを使っていても、そこから出力できるデータと行政手続きや社内で必要とするデータとはギャップがあり、そのギャップを埋めるためにExcelを使ってデータを加工することも多いでしょう。
そこで、詳しい使い方は割愛しますが、人事業務の実務で頻繁に使うExcelの機能について活用シーンとともに紹介します。本文中の【】内がExcelの機能です。Excelスキルのチェックリストとしてもご活用ください。
関数を使わない便利なExcelの使い方(基礎)
1つのファイルの2つのシートを左右に表示し比較しながら編集する
例えば、1つのExcelファイルに異なるシートで支給控除一覧表の前月分と今月分がある場合、 【新しいウィンドウを開く】で2つのシートを左右に並べて表示・編集することができます。
24時間以上の時間を表示する
労働時間を集計する際など、【表示形式】をユーザー定義の[h]:mmに設定すると、24時間以上の時間、例えば25:00を表示できます。なお【表示形式】がh:mmでは、24時間未満の時間しか表示できないため注意が必要です。
多くのデータから該当する行だけ抽出する
【フィルター】を設定すると、数クリックで見つけたい行だけ抽出することが可能です。特定の列で、色を付けたセルを含む行だけ表示することもできます。
Excel関数とピボットテーブルで作業時間短縮(中級)
セルを合計する
賃金や労働時間を合計するときには【SUM関数】を使います。
賃金や労働者数を端数処理する
小数点以下切り上げ、小数点以下四捨五入、小数点以下切り捨てなど、賃金や労働者の端数処理をするときには、切り上げは【ROUNDUP関数】、四捨五入は【ROUND関数】、切り捨ては【ROUNDDOWN関数】を使います。
小数点以下を端数処理して整数にするため、これらの関数の2つ目の引数は0を指定しています。端数処理をする桁数によって2つ目の引数の数字は変更してください。
2つのセルが同じか比較して確認する
給与計算が終わった後などの確認で、2つの表(セル)に入力されているデータが一致しているか、どこが異なっているかを【EXACT関数】で簡単に見つけることができます。セルが一致していればTRUE、不一致ならFALSEと表示されます。比較できるデータは数値だけでなく文字も対象です。
条件によって処理を分ける
労働時間が所定労働時間8時間を超えた場合は割増賃金を計算するため残業時間を計算(=総労働時間-所定労働時間8時間)し、所定労働時間を超えない場合には残業時間は0になるというように、条件によってセルに表示される数値や文字を変更したいときは【IF関数】を使います。
複数の条件にあうセルを合計する
出力した従業員の年次有給休暇管理表データから、「基準日(有休付与日)以降」かつ「次の基準日より前」の条件にあう有給取得日数を合計するとき、【SUMIFS関数】を使います。
別の表からデータを検索して表示する
例えば、5段階の賞与評価A~Eに対して支給率が記載されている表から特定の賞与評価の支給率を検索して表示するには【VLOOKUP関数】を使います。なお、同様のことがMicrosoft 365やOffice 2021以降のExcelなら【XLOOKUP関数】で、より簡単にできます。
大量のデータを見やすく整理する
給与計算システムから従業員全員分の賃金台帳1年分をCSVで出力して、残業時間を含め労働時間や賃金のデータを見やすい形にするには【ピボットテーブル】を使います。
もっと効率化したいExcel(上級)
手作業を自動化する
【マクロ】は、Excelを含めOfficeで行う手作業をVBA(Visual Basic for Application)というコンピューター言語を使って自動化する機能です。【マクロ】を使いこなすにはプログラミングスキルが必要ですが、一度身に付けると、自動でファイル名の変更、Excelのシートを作成・加工およびグラフの作成、シートの連続印刷、送信メールの下書きを作るなど様々なことが短時間でできるようになります。
まとめ
Excelはリリースされてからの歴史も長く、関数だけでも覚えきれない数があります。しかし、人事業務で頻繁に使うExcelの機能は限られ、必要なものを押さえることで効率化の効果を上げることが可能です。
紹介したExcelの機能
新しいウィンドウを開く
表示形式
フィルター
SUM関数
ROUNDUP関数
ROUND関数
ROUNDDOWN関数
EXACT関数
IF関数
SUMIFS関数
VLOOKUP関数
XLOOKUP関数
ピボットテーブル
マクロ(VBA)
プロフィール
電気工学修士。今でいうAI(人工知能)を研究。元ソフトウェアエンジニア。新卒でソフトウェア開発に従事。プロジェクトマネージメントやソフトウェア品質管理を担当。主に日本、韓国、中国、台湾のチームに対して多言語対応のRPA(ロボティックプロセスオートメーション)を導入し、テスト自動化による工数削減および品質向上のプロジェクトを牽引。