在宅勤務やリモートワークの限界
<株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役 大曲義典 社会保険労務士事務所 所長 大曲義典/PSR会員>
コロナ禍を契機として、どこの会社でも在宅勤務やリモートワーク(以下「在宅勤務」と表現する。)が拡がりをみせた。
通勤や社内の密な環境を避け、コロナ感染を予防するためには致し方なかった面もあった。
しかし、昨今のようにコロナ禍が落ち着いてくると、一部の会社では在宅勤務の在り方を模索し始めたようだ。
様々ある会社を一括りで語ることは避けねばならないが、在宅勤務を経験したことにより、その効果の有無を理解した会社が、在宅勤務と自社の業務との適合性を検討せざるを得ない状況に至ったのだろう。
多くの会社は「チームで働くこと」を重要視している
発端はアメリカのアマゾン・ドット・コム社かもしれない。同社は2025年1月から社員に原則週5日の出社を義務づけることを決定したようである。
コロナ禍の収束後は週3日出社としていたようだが、在宅勤務をついに廃止してしまうという。アマゾン・ドット・コム社を含む、アメリカのいわゆるGAFAMではマイクロソフト社以外は在宅勤務がなくなることになる。
日本でも、2020年5月に31.5%だった在宅勤務率は、2023年7月には15.5%まで低下しているとの調査結果が出ている(公益財団法人日本生産性本部の調査)。
個別の会社では、すでに在宅勤務を廃止したり、縮小しているところもあるようだ。例えば、サントリーホールディングスは、2021年に導入した1日200円の在宅勤務手当を今年4月に廃止している。
在宅勤務に慣れてしまった人にとっては、今さら出社の義務化はないだろう、という心境だろう。
しかし、会社の本音は違うところにあるようだ。それは、一部の優秀な社員を除いた大多数の社員にとっては、在宅勤務が非効率な働き方となっている実態がデータで示されているからだ。
なぜ、非効率な働き方なのか?それは、多くの会社ではサラリーマン・サラリーウーマンがチームを組んで働くように仕組まれているからである。
それによって、社員は会社に利益の最大化をもたらすことを運命づけられている。経営者やフリーランスの働き方とはまるで違うのが雇用された社員の働き方なのである。
人はフェイス・トゥ・フェイスで触発されながら成長する
在宅勤務では効率的なチームワークを発揮することは難しい。
不可能ではないが、異なる価値観やスキル、経験や年齢といった用意されたフレームワークの中でダイバーシティを活かしたアイデアや施策を生み出すのは容易くはない。
やはり、出社してのフェイス・トゥ・フェイスには敵わない。
本来、会社へのロイヤリティや企業文化に馴染むためには、経営理念や組織風土といった価値観を共有する人の中に入り込まなければ醸成されない。
人間は意識、無意識に関わらず、周りの環境からとてつもない影響を受ける動物である。
出社して働くということは、机を並べて働くということであるから、それによって有形無形に相互に触発されながら成長しているのである。
人間は賢い生き物ではある。しかし、本当は自分自身をメタ認知することなどできず、周りからの良い影響を受け続ける必要があるわけである。
在宅勤務はどこまでいってもソロプレイとしてのワークスタイルであり、物理的距離を置くことで企業文化に根ざして働くというコミットメントは低下していく。
加えて、在宅勤務はチームワークが成り立ちにくい働き方でもある。そのような理由から会社によっては在宅勤務不要論が趨勢となりつつあるのかもしれない。
もちろん、社業の性格から在宅勤務こそベストマッチという会社もあるだろう。
また、在宅勤務に否定的な会社であっても、給与計算、経理・財務事務など仕事の中身によっては在宅勤務に適合する職種もあるだろう。
今後の在宅勤務の未来を敢えて予想すれば、流れとしては衰退していくことになるだろう。
しかし、在宅勤務にも事業コストの削減、業務効率の改善、生産性の向上など、多くのメリットがあるのも事実である。
このように考えると、在宅勤務とオフィス出社の間でバランスを取ったハイブリッドワークも一定の共通解になるのかもしれない。
プロフィール
大曲 義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役(http://www.wbc-associate.co.jp/)
大曲義典 社会保険労務士事務所 所長
関西学院大学卒業後に長崎県庁入庁。文化振興室長を最後に49歳で退職し、起業。人事労務コンサルタントとして、経営のわかる社労士・FPとして活動。ヒトとソシキの資産化、財務の健全化を志向する登録商標「健康デザイン経営®」をコンサル指針とし、「従業員幸福度の向上=従業員ファースト」による企業経営の定着を目指している。最近では、経営学・心理学を駆使し、経営者・従業員に寄り添ったコンサルを心掛けている。得意分野は、経営戦略の立案、人材育成と組織開発、斬新な規程類の運用整備、メンヘル対策の運用、各種研修など。