【経営人事改革の視点】リスク回避志向が成長を阻む
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
ヒトは損失回避志向を持つ
人間は何かを失うことをとても嫌う生き物です。確率的な合理性を超えて損失回避志向を持つことは、「プロスペクト理論」によって説明されています。
損失回避志向は人間の感情システムにも組み込まれており、人は得ることよりも失うことを恐れます。1万円の利益を得たときの喜びの持続時間と、1万円の損失を被ったときの心理的ダメージが持続する時間を比較すると、後者のほうが何倍も長いのです。
一度限りの人生を歩む生活人としては、この感覚はとても重要です。損失が限界を超えると人生は破綻に向かうので、損失回避志向を持つことはとても合理的なのです。
しかし、企業人としてはこの生活人としての感覚が往々にして合理的な判断を狂わせます。投資とリターンの確率計算に至れば良いのですが、確率の判断を行う前に、とにかく出費そのものを忌み嫌う極端な姿勢が見受けられることもあります。
企業活動においては、リスクをきちんと評価し、その確率を踏まえて合理的な意思決定を行う必要があります。リスクを取ることから逃れてばかりいると、現状維持以上のことは何一つ起こらないのです。
日本人は特別に損失回避志向が強い
プロフィール
西川幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員