【専門家コラム】標準化は企業の教科書づくり

公開日:2024年12月12日

 

 

[経営人事改革の視点]標準化は企業の教科書づくり


<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>

 

教科書のない学校は成り立つか

人間は、日々暮らしていくために自身の生存領域をつくっていきます。

動物が穴を掘ったり、巣や塚をつくったり、クモが巣を張り巡らせたりするのと同次元で、身の回りの環境を改変し、自身の生存領域、生きるための空間である「ニッチ構築」を行うのです。

会社勤めの人間にとって、会社は生きる糧を得るための舞台です。

そこでは、自分自身が業務を行う物理的なスペースや業務で関わる他者との関係も重要な要素となります。

例えば、フリーアドレスのデスクで少しでも居心地のいい場所を確保することや、職場における人間関係に気を遣うなどの行動も生まれます。

こうした行動は本人にとっては快適なニッチを確保するための大事な取り組みなのです。

職務の遂行方法に対してマネジメントの働きかけが弱い場合、会社にとってではなく、その人にとって合理的な方法が取られることがあります。

それは必ずしも企業にとって合理的なものではなく、本人のやりやすさ、ふるまいやすさが優先されるものになりがちです。

そのため、職務遂行のあり方は標準化して、企業にとって望ましいものにしていく必要があります。

社員のニッチ構築行動は、他の社員のニッチ構築行動と干渉し合う場合があります。

例えば、明確に職務分掌が定められていないけれど誰かが行う必要がある業務があった場合、うまく避けていく社員と義務感から引き受けることになる社員では労働負荷が違ってきます。

年次有給休暇の取得について。業務の都合を考えた場合、繁忙期など有給休暇を取りにくいタイミングもありますが、そこを優先的に休暇に充てる社員と遠慮する社員では、ニッチの快適さが違ってきます。

会社にとって困った行動を起こす問題社員も存在します。問題行動にはさまざまなものがありますが、業務指示に従わないというのもその典型例です。

上司が業務指示を行っても、多忙を理由にしたり、雇用契約にその業務内容は含まれないなどと主張したりして指示に従わないケースがあります。

そのように対応することで、業務指示から逃れられる可能性が高いと、そうした行動が繰り返されることになるのです。

 

組織拡大の限界

 

プロフィール

西川幸孝

株式会社ビジネスリンク 代表取締役 
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士

愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員

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