子育てを大切にする会社を目指す!職場風土をつくるためのポイントを解説
<ごとう人事労務事務所 後藤和之/PSR会員>
近年の育児休業の取得推進もあり、男性の育児休業取得率が増加しているなど、「仕事」と「育児」の両立(ワークライフバランス)が社会の中で徐々に浸透されています。
今回は、育児休業などの取得推進に留まらず、真に‘’子育てを大切にする会社‘’を目指すための職場風土づくりのポイントを解説します。
職場風土づくりは「種をまき、水をやり、花を咲かせる」イメージを大切に!
例えば、ハラスメント防止を目指した時に、「ハラスメント防止規程」をつくることを第一歩とした場合に、それが種をまくにあたるとします。しかし、その規程をつくっただけでは、ハラスメントが防止できるわけではありません。
そのため、規程に基づき「研修会」などを実施することで水をやる必要があります。規程が形だけでなく、どのような場合にハラスメントとなるかを、従業員へ継続して意識を持たせることが大切になります。
しかし、ハラスメントを恐れてコミュニケーションが少なくなり、生産性が低下したら意味がありません。
ハラスメントへの理解を深めることをきっかけに、一人ひとりの従業員が余計なストレスを抱えないためのコミュニケーションを考え、生産性を高めることで花が咲いたといえます。
ハラスメントに限らず目指すべき職場風土づくりには「種をまき⇒水をやり⇒花を咲かせる」段階をしっかり踏んでいるかが大事であり、子育てを大切にする会社を目指すにも同じことがいえます。
~種をまく~社会保険を理解する場面づくり
従業員の多くは、健康保険は医療費の負担を軽減すること、雇用保険は失業時に給付があることなどは知っているかもしれません。
一方で、健康保険は出産育児一時金・出産手当金があること、雇用保険は育児休業給付金があることなどは、出産を迎えてから知ることが多いかもしれません。
「なぜ社会保険料が、給料から控除されているのか」ということを従業員が知る意味においても、新入社員への説明会や日常の研修場面など、社会保険を理解する場面づくりが種まきとして必要です。
なぜなら、早い段階から「出産育児一時金・出産手当金」「育児休業給付金」などの存在を知ることで、従業員一人ひとりが生涯にわたっての「ワークライフバランス」をイメージすることにつながるからです。
そして「育児」だけではなく、さまざまなライフステージごとの社会保険を伝えることを意識しましょう。
例えば、「病気・けが」であれば『業務上の事由であれば、労災保険の休業補償がある』『業務外の事由であれば、健康保険の傷病手当金がある』などを伝えるということです。
能力開発・介護・障害・老齢・死亡など、さまざまなライフステージを支えるために社会保険があり、その1つとして「育児」があるという理解が大切です。
~水をやる~従業員の「ワークライフバランス」に伴走する場面づくり
育児・能力開発・介護などに関する社会保険の理解は、従業員が「ワークライフバランス」を描くことにつながります。
会社が従業員一人ひとりの「ワークライフバランス」に伴走することが‘’水やり‘’です。
社会保険を理解するための種をまくことはできても、その後に会社として何もしなければ、「ワークライフバランス」の花が咲く前に枯れてしまいます。
伴走するための代表的な取り組みとしては「定期的な面談」です。
文字通りワークとライフのバランスが大事であり、面談の場面などを通じて、会社が従業員一人ひとりのライフを知らなければワークとのバランスを取ることができません。
しかし、花に水をやり過ぎることが良くないように、必要な範囲を超えてライフへ介入することも良くありません。
ライフへ過度に介入するのではなく、日常のワークの質の向上のために、従業員と伴走的に「ワークライフバランス」を一緒に考えるといった姿勢が大切です。
~花が咲く~従業員同士が互いの「ワークライフバランス」を尊重できる
種をまき、水をやることで「ワークライフバランス」の花が咲くことになります。
ここで留意すべきは、1人の従業員だけの「ワークライフバランス」の花を咲かせるのではなく、すべての従業員の「ワークライフバランス」の花を咲かせることが目的であるということです。
例えば、会社として育児休業の取得を推進できたとしても、特定の職員に業務が集中することになっては目的を達成したことにはなりません。
「育児」だけに特化してしまうことは、他の‘’ライフ‘’を軽視する恐れも出てきます。
ライフの軸が、「育児なのか」「能力開発なのか」「介護なのか」「リフレッシュなのか」など、一人ひとりの従業員によって違ってきます。
たくさんの「ワークライフバランス」の花を咲かせ、さらに従業員同士が互いの「ワークライフバランス」を尊重できるようにしなければなりません。
だからこそ、さまざまなライフステージがある中の1つが「育児」という認識が必要になります。
【ポイント】育児休業などの制度利用自体が最終的な目的ではない
現実に男性の育児休業取得率が低いなどの社会的な問題を解決する上で、育児休業取得などを推進することは、とても大切なことです。
経営戦略として、くるみんなどの国の認定制度を目指すことも一つの方法です。
しかし、制度の利用自体を目的としてしまうと、本来の目的が見失われる恐れがあります。
本来の目的は育児中の従業員だけでなく、すべての従業員が働きやすい職場環境を目指すことです。
「育児」に焦点を当てることだけが、『子育てを大切にする会社』ではなく、さまざまなライフに焦点を当てることで、「すべての従業員が、子育てを尊重できる職場風土」ができてこそ『子育てを大切にする会社』といえます。
プロフィール
昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの業務に携わるとともに、福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。特定社会保険労務士として、人事労務に関する中小企業へのコンサルタントだけでなく、研修講師・執筆など幅広い活動を通じて、“誰もが働きやすい職場環境”を広げるための事業を展開している。
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