【専門家コラム】仕事と介護の両立支援コラム第26回「介護のある生活」実際の事例①80代の親を50代の娘が在宅介護<前編>

公開日:2024年8月30日

仕事と介護の両立支援コラム第26

「介護のある生活」実際の事例①80代の親を50代の娘が在宅介護


<一般社団法人日本顧問介護士協会 代表理事 石間洋美>

 

これまで、介護がどう始まるか、いざ始まったらどうしたらよいのか? 会社としてできることは何か? そして、介護にならないためにはどう予防するのか?などについてご説明してきました。

今回のコラムからは、実際に寄せられている介護相談の一部をご紹介していきます。

どのような家族構成で、どのような状況になり、そして、どのような介護サービスを選択して、介護のある生活へ変わっていくのか、具体的事例をご紹介していきます。

これから紹介する事例から、介護にまだ直面していない方も少しでも身近に感じていただければと思います。

 

80代の親を50代の娘が在宅介護するケース

 

【事例】
相談者(介護者):50代の女性(娘様)
被介護者:母親、80代、要介護3、認知症あり
家族構成:両親と娘様の3人暮らし。娘様は常勤(9時~18時、土日祝休み)でお仕事をしている

2年前に母親が認知症の診断を受けた。当初は日常生活にも大きな支障はなく、日中は父親が介護をすることで生活ができていた。

1年前から徐々に認知症状が進行していき、日中の介護量も増えてきた。

父親だけでは日中の介護が難しい状況になってきたため、介護申請を行い、介護サービスを受けることを決意した。

 

介護申請の結果、「介護度3」の認定

介護申請の結果、「介護度3」の認定がおり、担当ケアマネジャーがついた。

担当になったケアマネジャーと今の生活状況や娘様の仕事内容、今後の希望などについて話し合いを行い、まずは日中デイサービスへ通う案をいただいた。

ただ、母親の性格上、外出を嫌がることや、他人が多くいる場所へ行くことに抵抗を示すことが予想されたため、1日型のデイサービスではなく半日型のデイサービスから始めることにした。

娘様の予想は的中し、当初、母親はデイサービスへ通うことへの抵抗を示した。

また、デイサービスの環境に慣れるまで時間もかかった。

デイサービスに行く日は、娘様も仕事へ行く準備をしながら父親と協力し合い、嫌がる母親の支度も並行して行っていた。

母親には、“いつまでも自分で歩いて生活するための運動をする場所”ということを共通で説明してもらい、母親が納得するまで時間をかけた。

担当のケアマネジャーの協力や、デイサービスのスタッフの協力もあり、3か月程でデイサービスへ行くことにも慣れ、抵抗を示すこともなくなった。

しばらくは平日にデイサービスへ通い、土日は娘様が介護していたが、娘様の介護疲れも見られるようになり、ケアマネジャーのアドバイスで週末のショートステイを月に2回利用することもあった。

このような形で在宅介護生活を続けていたが、ある日母親が風邪をこじらせ入院することになった。入院期間は1か月だった。

 

風邪をこじらせ、1か月入院後、母親の様子が一変

退院日を迎え、退院後の生活も元のようにデイサービスとショートステイを併用して在宅介護生活を継続しようと考えていたが、母親の様子が一変した。

入院中の1か月間ほぼ寝たきりの生活だったため、母親の足腰はかなり弱って見えたが、笑顔もあり接するには入院前とあまり変わらないように見えた。

しかし、いざデイサービス再開の日を迎えたら、お迎えに来てくれたスタッフに暴言を吐き、車に乗り込むにも強い抵抗を示した。

娘様の仕事もあるため何とかデイサービスへは行くことができたが、その日は「帰りたい」の一点張りで事業所内を歩き回り、外へも出ようとする行為が続いたようだ。

そういった行為の対応でスタッフの方が一人つきっきりとなり、その後もデイサービスに行くことへの抵抗がおさまらなかった。

行っても帰宅願望が激しくなる日が続いたため、ついに通っていたデイサービスから「対応が難しい」との話が出た。

ケアマネジャーからも「今通っているデイサービスの利用は難しくなる」と話をされたが、その後のアドバイスはいただけなかった。

娘様は仕事を辞めることはできないため、この先どのように生活したら良いのか悩み、当協会(一般社団法人日本顧問介護士協会)に相談がきた。

 

次回は、この事例について、私たち一般社団法人日本顧問介護士協会がどのようにアドバイスしたのかをご紹介いたします。

 

 

プロフィール

石間洋美
一般社団法人日本顧問介護士協会(https://www.komonkaigo.jp)代表理事 

静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科卒業後、介護施設にて介護に携わる一方、介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務も経験。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。2020年4月に一般社団法人日本顧問介護士協会を立ち上げ、「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

 

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