【専門家コラム】経営人事改革の視点~企業文化や技術の伝承

公開日:2024年8月19日

 

 

[経営人事改革の視点]企業文化や技術の伝承


<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>

 

タスマニア効果

タスマニア効果とは、文化交流の断絶や人口減少によって文明の発展が逆回転していく現象をいいます。

タスマニア諸島はかつてオーストラリア大陸と地続きでしたが、約1万年前に起きた海面上昇により、大陸と分断されてしまいました。

その結果、大陸のアボリジニ集団などとの交流がなくなり、小さなコミュニティ内での文化や技術の伝承がむずかしくなっていきました。

それによって人口自体もさらに縮小していったようです。

こうした経緯によって、多くの文化や技術が失われていきましたが、その例として、衣服、釣り具、舟、複雑な石器の製作技術、食料貯蔵技術、複雑な宗教的儀式や信仰体系などがあげられます。

一度獲得した文化、技術であっても、人口あるいは交流人口が減少していく過程で、劣化したり失なわれてしまったりすることがあるのです。

こうした現象は、日本には無縁のもののように思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

少子化にともなう労働人口の減少は、今後ボリュームゾーンである中高年層が引退していくことにともない、急速に進んでいきます。

既に現在、大工をはじめとする建築関係の職人は、労働者不足に悩まされています。

このまま進んでいった場合、住宅建築やリフォームといった産業の土台自体が揺らぐおそれがあります。

伝統工芸などに至っては、技術の伝承自体が既に困難な状況にあるのかもしれません。

また、特定の分野だけでなく、教師、役人、医師(地方や産科医、小児科医)、看護師、介護士、農業従事者、ドライバー・運転士など、社会のインフラを支える基幹職が、近い将来非常に手薄になっていくことが予想されます。

これまで外国人実習生など海外からのマンパワーでカバーされてきた分野もありますが、急激に進んだ円安の影響もあってこうした人材の獲得は危うくなりつつあります。

閾値となる人口密度を下回る職業集団では、新たなイノベーションが蓄積されないだけでなく、従来の技術やノウハウが失われてしまう可能性すらあるのです。

 

企業が防衛的に行えること

 

プロフィール

西川幸孝

株式会社ビジネスリンク 代表取締役 
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士

愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員

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