【専門家コラム】介護に関して、この機関は知っておきたい!介護が必要になった時の窓口「地域包括支援センター」とは?

公開日:2024年8月19日

介護に関して、この機関は知っておきたい!介護が必要になった時の窓口「地域包括支援センター」とは?


<ごとう人事労務事務所 後藤和之/PSR会員>

 

会社が「従業員の介護離職を防止する」「従業員の仕事と介護の両立を応援する」など考えた時に、介護休業制度などの説明だけでなく、介護保険サービス利用などの‘’地域の介護相談窓口‘’まで説明を踏み込むことができれば、従業員にとってはたいへん心強く感じるものです。

今回は、介護が必要になった時の窓口「地域包括支援センター」について解説します。

 

実際に、会社で‘’地域の介護相談窓口‘’を説明する場面の難しさ

三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた厚生労働省委託調査「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果(以下、調査)」の中では、『介護が必要となった場合に相談すべき地域の相談窓口』という項目が設けられています。

その調査の中で「勤務先で‘’介護が必要となった場合に相談すべき地域の相談窓口‘’について説明を受けたか」を労働者に尋ねています。

回答は次のとおりです。

なお「正規労働者」「無期契約労働者」「有期契約労働者」については、調査時点で介護などを行っている人、「離職者」については、介護などを理由に離職した時点で、介護などを行っていた人を対象としています。

●正規労働者    ・説明を受けたことが「ある」27.3% ・受けたことが「ない」72.7%
●無期契約労働者  ・説明を受けたことが「ある」17.8% ・受けたことが「ない」82.2%
●有期契約労働者  ・説明を受けたことが「ある」19.2% ・受けたことが「ない」80.8%
●離職者      ・説明を受けたことが「ある」35.3% ・受けたことが「ない」64.7%

離職者を除けば「説明を受けたことがあるのが3割に満たない」という結果でした。

 

地域の介護相談窓口「地域包括支援センター」とは?

実際に人事労務に関して、会社が従業員の方たちへ伝えることは多くあります。

その中で‘’地域の介護相談窓口‘’という部分の説明まで行き渡らせるには労力が必要になります。

そのため、いかに効率的に‘’地域の介護相談窓口‘’を伝えることが大切になってきます。

高齢者の介護について‘’地域の介護相談窓口‘’の代表的なものが『地域包括支援センター』です。

従業員の方に「介護のことは、どこで相談したら良いですか?」と聞かれたら、ぜひ『地域包括支援センター』をご紹介ください。

『地域包括支援センター』は、介護に関しての総合相談支援業務を無料で実施しています。

『地域包括支援センター』の設置主体は市町村で、全国に5,431カ所(令和5年4月末時点)設置されています。

できる限り日常生活圏域(中学校区単位など)に『地域包括支援センター』が1カ所できるよう設置が進められてきました。

介護を必要とする方が住んでいる市町村のホームページなどを検索すると、担当地域の『地域包括支援センター』を調べることができます。

 

~3つのポイント~なぜ「地域包括支援センター」で相談するのが良いのか?

従業員の方に「なぜ介護のことは、地域包括支援センターで相談することが良いのですか?」と質問された場合は、次の3つのポイントをぜひお伝えください。

 

~ポイント①~保健・福祉・介護の専門職が配置されているので「伴走的な支援」を受けることができる!

役所・役場などでもさまざまな相談はできますが、介護のことに限らず「役所・役場へ足を運ぶ時は、何かの手続きをすること」が主な目的となる場合が多いかもしれません。

役所・役場よりも数多く設置されている『地域包括支援センター』は、より地域に根ざして相談を受けることができます。

そして『地域包括支援センター』には、保健の専門職である「保健師」、福祉の専門職である「社会福祉士」、そして介護の専門職である主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)」、3つそれぞれの有資格者の配置が必須となっています。

何かの手続きが必要ではなくても、『地域包括支援センター』は各専門職が伴走して「介護を必要とする方、そして介護をしている方と一緒になって必要な取り組みを考えること」ができるのです。

 

~ポイント②~高齢者の権利を擁護する業務を行っているので「身近なことから相談」することができる!

『地域包括支援センター』の主な業務の一つが「権利擁護業務」です。

具体的には、成年後見制度の活用促進、高齢者虐待の防止、消費者被害の相談などです。

年齢を重ねると身体的機能や認知機能などが衰えていきますが、だからといって誰もが介護を必要とするわけではありません。

しかし、さまざまな機能が衰えることで、何かしらのトラブルに巻き込まれる可能性は高くなります。

例えば「物忘れが急にひどくなった・・」「知らない人からの電話が多くなった・・」などです。

従業員の家族の中で、そのような悩みを抱えている方がいる場合は、ぜひ『地域包括支援センター』への相談を勧めてみましょう。

介護が必要になる前に、身近なことも相談できる。それも『地域包括支援センター』の強みなのです。

 

~ポイント③~介護予防を目的とした業務を行っているので「早期的な対応」へとつなげることができる!

介護保険サービスを利用する場合には、その人がどれくらいのサービスを必要とするのかを行政(介護認定審査会)が審査することになります。

要介護度(どれくらいのサービスを必要とするのか)は、「要介護1~5」「要支援1または2」の7段階あり、「要介護5」が最もサービスが必要と考えられ、「要支援1」が最も軽度ということになります。

「要支援1」「要支援2」では、ある程度の動作を自ら行うことができる場合が多いです。

しかし、この段階で必要なサービスを受けないと身体的機能や認知機能などの衰えが進行し、「要介護」の状態になる可能性が高くなることも考えられます。

『地域包括支援センター』では、「要支援1」または「要支援2」の方、さらには要支援・要介護になる可能性がある方へ、サービス提供のケアプラン作成を主な業務としています(なお、「要介護」になった場合のケアプランは居宅介護支援事業者が作成)。

『地域包括支援センター』は日常から介護予防に特化した取り組みを行っており、それは早期的な対応へとつながることにもなるのです。

 

>>>【介護両立支援 × 人事労務】企業が行う両立支援のあり方と実務の進め方
 

プロフィール 

後藤和之
ごとう人事労務事務所(https://gtjrj-hp.com
社会福祉士・社会保険労務士 
 

昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの業務に携わるとともに、福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。特定社会保険労務士として、人事労務に関する中小企業へのコンサルタントだけでなく、研修講師・執筆など幅広い活動を通じて、“誰もが働きやすい職場環境”を広げるための事業を展開している。

監修:退職後の社会保険と税の手続き(株式会社ブレインコンサルティングオフィス)

 

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