1.再雇用と年次有給休暇
年次有給休暇は、労働基準法第39条1項において、 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。 と規定されています。同じ使用者に再雇用された際、勤続年数が通算されずにリセットされると、退職日まで有していた有給休暇の権利や勤続年数はゼロからのスタートとなります。この場合、最短でも再雇用時点から6箇月経過後に10日の有給休暇が付与されることになり、労働者側にとっては極めて不利に働くことになります。
そこで、会社側としてはこれらをリセットして再雇用という方法を就業規則及び再雇用時の労働契約条項に盛り込みたいと考える訳ですが、定年退職から再雇用までの間に相当な期間が存在しない限りは、定年により一旦は退職して労働契約が終了したとしても、それは形式的なものに過ぎず、実態に即して見れば継続して勤務していると理解するのが自然であるため、継続勤務の取扱いがなされます。
2.「継続勤務」における行政解釈(S63.3.14 基発第150号)
継続勤務は、文字通り「継続して勤務していること」になりますので、同じ使用者に労働者が雇用されている状態をいいます。継続勤務について行政解釈が通達として出されています。そこでは、継続勤務は在籍期間のことをいい労働契約が存在している状態と定義されています。仮に休職していたり、長期にわたる欠勤が続いていたとしても、会社に籍があれば継続して勤務しているものと扱う訳です。よって、この期間も在籍期間として通算されることになります。更に、定年退職者を嘱託などで再雇用する場合も、退職金が支払われたか否かに関係なく、実態として労働契約関係が存在していれば、勤続年数は通算するものとされており、例として「定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合」が挙げられています。
3.「継続勤務」の基準ライン
どのくらいの空白の期間を空けて再雇用すれば継続勤務とならないかについて、現在のところ具体的な期間は法律をはじめ通達においても触れられていない状況です。よって、個々の会社の実態に応じた常識的な判断に委ねられていると言ってよいと思います。 ただし、高年齢者雇用安定法の法改正に対応した就業規則でよく見られる、定年退職の翌日に再雇用するような場合は継続勤務となることは明らかであり、勤続年数に通算されます。いくつかのケースを考えてみましょう。
(ア)継続勤務とされるケース
- 就業規則に再雇用条項の規定がある。
- 雇用契約書に再雇用する旨の記載がある。
- 退職する際に近々再雇用することを労使双方で取り交わした。 ・・・等。
(イ)継続勤務とされないケース
- 退職から再雇用に至るまで相当な期間(例えば6箇月)が空いている。
- 期間雇用契約などで、労働契約関係が断続しており在籍期間が継続しているとは認められない。 ・・・等。
団塊の世代が定年退職を迎えていますので、設問のような疑問は労務管理の現場で頻繁に起きていると思います。継続勤務の取扱いとするか否かは「実態に即して判断する」ことがポイントです。間断なく労働契約関係が続いていると認められるのであれば、通算し継続勤務しているものとして取り扱いましょう。 また再雇用者は通常、年次有給休暇の残日数が多いものと思われます。再雇用者を対象に年次有給休暇の計画的付与の導入を検討してみるのも良いかもしれません。 < 社会保険労務士 佐藤正欣 >