厚労省が公開している令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を見ると、31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約457万人で、平成26年と比較すると、約170万人(59.0%)増加しています。
また、主に中小企業では人手不足の影響もあり、就業規則上の定年や再雇用期間を過ぎても雇用を続けているケースも多く、筆者の経験上も60歳以上の従業員に関する労務相談は増加傾向にあります。
今回は、60歳以上の従業員を雇用する場合の注意点について解説します。
高齢者雇用におけるルール
まず、高年齢者雇用上のルールですが、高年齢者雇用安定法により、会社は65歳までの雇用を確保する措置(「高年齢者雇用確保措置」といいます)をとることを義務付けられています。
具体的には、以下のいずれかの措置をとる必要があります。
① 定年後も引き続いて65歳以上まで雇用する継続雇用制度の導入
② 定年を65歳以上まで引き上げる
③ 定年を廃止する
実務上は、②、③の選択肢をとると人件費が膨らむケースも多いため、多くの会社は①の選択肢を採用し、60歳で定年としたうえで、65歳までは1年間の有期雇用契約を更新する制度を設けています。
なお、上記高年齢者雇用確保措置については、2013年時点で労使協定を締結していた場合、特例的に継続雇用対象者を限定できる経過措置が設けられていましたが2025年3月末をもって当該経過措置は終了するため、2025年4月以降は、すべての会社において上記措置の実施が求められます。
継続雇用制度を導入している場合、「再雇用した従業員を雇止めできるか」というご相談も多いですが、上記ルールとの兼ね合いから、雇止めできるのは解雇事由に該当している場合など限定的と考えられます。
状況に応じ個別の判断が必要ですが、再雇用した従業員の雇止めはより慎重に検討する必要があります。
「無期転換ルール」との関係
プロフィール
社会保険労務士法人テトラ 代表社員(https://tetra-sr.jp/)
2018年に社労士登録後、2020年より法人化、代表就任。
現在は、個人事業主から上場企業まで、労働法・社会保険関係の手続代行、労務相談、給与計算代行、人事評価制度構築支援、M&Aの労務DDなどクライアントが本業に集中し、安心して成長できるように人事労務全般の支援を行う。著書に新日本法規「新しい働き方対応 会社経営の法務・労務・税務」共同執筆(2022年)がある。
趣味はサウナと読書。