<Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田 健太/PSR会員>
従業員の仕事へのモチベーションは業績に直結するため、経営者の方なら当然、このような要望をお持ちではないだろうか。
従業員のモチベーションアップのために、人事施策として一番始めに考えられるのは、やはり賃金や賞与の金額アップかと思われる。しかし、多く聞かれる悩みとして、「同業他社よりは給与もボーナスも多く支給しているのに、従業員のモチベーションが高まらない」というものがある。
また、半期で数百万円という賞与を支給しているにも関わらず人がどんどん辞めていく、という職場もあるようだ。
賞与や賃金アップが従業員のモチベーションアップにつながらない、それはどうしてなのだろうか?
実は、心理学(特に当社代表の流派である行動理論)によるとこの結果は当然であると言える。
人は良い行動が出た後に、すぐに褒められると(褒め方は様々だが)、その行動の出る確率やその行動が維持されることが多くなる。例えが動物で恐縮であるが、テレビで見る麻薬探知犬は、麻薬を探知してその隣に座ると即座に餌を与えられ褒められている。その結果その行動は維持されているのである。
人に置き換えると、例えば、
会議で積極的に発言する→褒められる
であると会議で積極的に発言する行動は増えるだろう。
一方、
会議で積極的に発言する→空気を読めと怒られる
であれば、会議で発言する行動は減るだろう。
従業員の行動は案外、行動直後の周囲からのフィードバックに左右されているのだ。
ただし従業員は人であるから動物のように即時フィードバックだけが効果的なわけではない。人は、言葉があるため言葉で「先週のあの行動よかったよ。」と褒めることもできるのである。
ここからが大切なところなのだが、
とは言っても、言葉によるフィードバックにも有効期限があるのである。
◆言葉によるフィードバックの有効期限とは??
言葉によるフィードバックの有効期限は、心理学的には最長2週間と言われている。
鋭い経営者の方であれば、ここでなるほど! とおっしゃっていただけるかと思う。
そう、賞与は良い行動を起こしたとしても、通常半年後に褒められるのである。昇給も同じだ。多くの会社で年に1回だけ褒められることになるのである。これだとどのような行動をしたから褒められているのか、従業員はわからない。
ではどのようにすれば良いのだろうか?
◆効果的なフィードバックのポイント
方法はいろいろと考えられるが、良い行動が起きた時にすぐに褒められる環境をつくることが大切である。
有名な例だと、某アトラクション施設ではよい行動が見られた社員はその場で褒めるカードが渡される。そこには具体的な行動が記載され、その後の人事評価にもつながるのだ。
当社では、毎週面談をして、具体的な行動ができていたかできていなかったかのフィードバックをすることもお勧めしている。初めは大変だという声が聞こえてくるのだが、やってみると案外楽だったりする。それどころか、部下とのコミュニケーションが円滑になった、幹部が管理職意識を持つようになった、という声もいただいている。
大切なポイントは、経営者として、従業員に望ましい行動が見えた時に適切にできるだけ早く褒められる状態になっているか、ということである。
このポイントで是非社内を見渡して、従業員のモチベーションが上がる環境を整えていただきたいと思う。
プロフィール
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所(http://cp-sr.com)代表