<Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田 健太/PSR会員>
◆今では聞くことが珍しくないブラック企業
近年ブラック企業という言葉を聞くことが珍しくない。
ブラック企業とは、一般的には長時間労働で社員をこき使い、残業代も支給しない企業のことを指す。このような企業では離職率が高く、社内の雰囲気も暗くなりがちだ。長時間残業でプライベートな時間もなく、お金も支払われないのであればある意味当然と言えるだろう。
しかし一方で、ブラック企業と対極でホワイト企業と呼んでも良いくらいの会社でも、社内の雰囲気が暗いと悩んでいる経営者もいる。
どうして長時間残業もなく、残業があったとしても残業代がきちんと支払われている会社なのに雰囲気が暗いと悩むのだろうか。
どうにか明るい職場にならないかなと聞かれたときに私が必ず言うのが「明るい職場はつくれません!」ということだ。
多くの経営者の方が驚かれますが、これはある意味事実だろう。
◆「明るい職場」とは?
明るい職場というのは、それぞれの人にそれぞれの考えがあり、明確な定義がない。
ある人は明るい職場の定義を、窓際で日光が差し込んでいる職場と想像し、またある人は雑談が多い職場と想像する。
つまり、明確に行動化された定義がないと職場を変えることは難しいのだ。
◆どのように変えたいのか定義する
どのような行動でも良いが、職場を変えたい!と思ったときは、行動レベルまで落とし込んで定義すると、より早く職場改善が進むようになる。
例えば、「明るい職場」というような漠然としたものではなく、「毎日朝出社したときに全員が目を合わせて挨拶をする職場」であれば叶えることができる。
また、暗いと感じている経営者に話を聞いていくと、経営状況によってもパターンがあるように感じられた。今回は代表的な2つのパターンを紹介する。
パターン1 既存の業務だけで十分に収益を上げているケース
きちんと収益の柱が安定しており、またその柱となる業務も反復継続するような企業の場合、ある意味安定している企業だが、社員はある業務をひたすら回していけばよいという雰囲気になり、マンネリ化する場合がある。例えば、すごくニッチな分野でシェア1位(というかライバルがいない)等の企業でそのような傾向が見られる。朝礼をしたとしても、すでに解決策は過去にあり、新しく考えようという社風が失われており、暗い雰囲気と感じられることがある。このような場合には、小さくても新規事業にチャレンジする等、社員にとって自分でも創り出せるような業務や雰囲気作りが大切になる。
パターン2 社長がすべて決定し、社員は作業者でしかないケース
すべての企画や決定権が社長にあるケースで、創業社長に多いパターンだ。このような会社では、業績は好調だが、社員は指示されたことを実行する作業者でしかなく、モチベーションが低下することがある。社員が意見を言ったとしても、社長の一存ですべてが決定されるため、次第に誰も意見を言わなくなる。
2つのパターンに共通しているのが、社員が会社に認められていないと感じていることだ。人のモチベーションは給与だけでは上げることはできない。給与とはあくまでも不満を抑えるものであって、満足に通じるものではない。承認されていること、自分で何か変化を起こせることがモチベーションアップの要因なのだ。
自社を振り返って、朝礼や普段の何気のない瞬間、社内の雰囲気はいかがだろうか?暗いなと思ったら、まずはその原因を考えることだ。社員のマネジメントを変えて、やりがいのある職場づくりをする必要があるかもしれない。
プロフィール
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所(http://cp-sr.com)代表