<Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田 健太/PSR会員>
◆うつ病と聞いても驚かない時代になってきている。
うつ病はこころの風邪というキャッチコピーが功を奏したのか、きちんと治療さえすれば治るという認識も広くなってきたようだ。
また、職場でも「あの人うつだって」といった会話を聞くこともあるだろう。
◆うつ病と落ち込みの違いは?
さて、一般的には、なんとなく暗くなるというイメージのうつ病だが、われわれが日常体験している、落ち込みとどう違うのか?
うつ病とは、DSM-Ⅴというアメリカ心理学会の診断基準によると、抑うつ障害・うつ病性障害(Depressive Disorders)と呼ばれるものをさす。
医師による診断書では、「うつ病」と記載されることが多い(落ち込みの状態は、うつ状態と記載されることが多い)。
◆うつ病の症状とは
うつ病では、気分の落ち込みだけではなく、日常生活に与える影響の範囲が広くなる。
例えば、
・眠れない
・食欲がなくなる
・物事に億劫になる
・物事に対する興味を失う
・性欲がなくなる
等だ。
このような状態が1週間以上続く場合は、単なる落ち込みではなく、ひょっとしたらうつ病かもしれないと考えてみたほうが良いだろう。
◆早めの通院がその後の予後につながる
一度まずはかかりつけの内科医に相談してみて(いきなり精神科に行く必要はない)、指示を仰いでみることをおすすめする。精神科に行くとなると少し気が引ける人もいるかもしれないが、かかりつけの内科であれば気軽に行けるだろう。症状を話してみるときちんと判断してくれる。
早く治療することで、早くよくなることができる。
◆職場でできるうつ予防とは?
企業向け研修を多く実施している、Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所では、セルフケア研修(社員一人一人のこころのケア)も多く実施している。
セルフケア研修として、ストレスとうまく付き合う方法を研修を実施することがある。そこでいつもお伝えしていることとして、うつなどをはじめとするメンタルヘルス疾患を予防するには、「食事が大切」ということだ。
うつ予防として、食事が大切と研修でお伝えすると、多くの方に驚かれる。
当たり前すぎるのか、それともこころと食事があまり結びつかないのか、意外と見落とされがちなポイントだと感じている。
睡眠がなぜ必要かというと、心の働きの多くは脳が司っている。その脳に栄養を補給しているのは、体に栄養を補給しているのと同じ「食事」なのだ。脳も体の一部ですから、当たり前といえば当たり前なのだが、不思議と体と切り離して考える傾向があるように感じる。
例えば、上司が食事抜きで仕事をしていると、部下はなかなか食事にいけないものだ。ランチをきちんと確保できるように、上司自身も気を付けてほしい。
さらに、繁忙期などで残業をするときには、ぜひとも夕食タイムも確保するよう気を付けてあげてほしい。
当事務所が関わっている企業で、よい制度だなと思ったのが、どうしても残業が必要な時期は、部署全体で時間を決め、弁当を注文して皆で一斉に食事をするという制度だ。
上司に気を使って食事を食べ損なうという部下もいなくなる。さらに、一緒に食事をすることによって、また頑張ろうという雰囲気になるので、チームとしての連帯感・士気も上がる。
◆もう一つのうつ予防策とは?
もう一つの職場でできるうつ予防として、「昼休み中に昼寝を推奨する」というものがある。それだけ?と思われるかもしれないが、実はとても効果的なのだ。
というのも、メンタルヘルス疾患のほとんどが睡眠不足を伴う。また、シエスタというスペイン語があるように、スペインでは昼の時間に短時間寝ることが習慣化されている。
短時間の昼寝は、その後の作業効率を向上させると言われている。しかしながら、なかなか職場で寝るのには抵抗がある人が多いのは事実だ。
そこで当事務所では、会社として昼寝を推奨することをおすすめしている。
ある企業では、昼休み中に会議室をシエスタルームとして解放し、昼寝を推奨するという取り組みをしているところもある。
昼寝をすることで、睡眠不足からくるメンタルヘルス疾患の予防だけではなく、作業効率の向上も見込まれる。
ちょっとしたことだが、ぜひ一度試していただきたい。
このように、セルフケアでは、食事と睡眠というある意味基本的なところが第一歩として大切です。
食事を抜いてまで働かせていないか、きちんと眠れているか、ご自身も周りの人もぜひ一度点検していただきたい。
プロフィール
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所(http://cp-sr.com)代表