企業型の確定拠出年金の掛金には、拠出限度額(上限)が設けられていますが、その拠出限度額が、本年10月から引き上げられることになりました。
確定拠出年金の企業型年金における拠出限度額
改正前 |
改正後 |
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① 企業型の確定拠出年金の加入者であって、次の②以外の者 |
月額51,000円 |
月額55,000円 |
② 企業型の確定拠出年金の加入者であって、他の企業年金(確定給付企業年金など)に加入している者等 |
月額25,500円 |
月額27,500円 |
注.従業員(加入者)の拠出を認めるマッチング拠出を採用している場合、次のようなルールがあります。
○ 加入者の掛金を設定する場合、その額は、事業主の掛金を超えないようにする。
○ 拠出限度額は、事業主の掛金と加入者の掛金の合計額に適用される。
☆ 確定拠出年金を導入している場合、掛金の額の引き上げが可能となりますが、規約の変更が必要となることにご注意ください(マッチング拠出の場合、上記のルールにも注意が必要です)。
【参考】確定拠出年金の概要
○確定拠出年金は、事業主または加入者が掛金を拠出し、その掛金(年金資産)を加入者が自己責任で運用し、その運用実績に基づいて給付額が決定される年金制度。
○個人型と企業型の2種類がある。
○加入者が転職した場合等に、自己の年金資産を、個人型の確定拠出年金または他の企業型の確定拠出年金に移換することが可能
メリット |
デメリット |
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事業主側 |
○掛金の追加拠出義務は生じない ○退職給付債務に基づく会計処理は不要 ○税制上、事業主が拠出した掛金は、全額損金算入 |
×加入者ごとの詳細な資産運用の記録等の管理が必要 ×資産運用状況が良好であっても掛金は軽減できない ×加入者に対して投資教育が必要 |
従業員側 |
○加入者ごとの年金資産が明確 ○運用方法や資産構成割合を選択できる ○運用が好調であれば高い給付が期待できる ○税制上、加入者が拠出した掛金は、全額所得控除 |
×運用成績により給付が変動するため、将来の退職後収入としての保障が劣る ×運用リスクを負う |
今回の企業型確定拠出年金の拠出限度額引き上げの背景には、「貯蓄から投資への転換」の推進の観点に加え、「公的年金給付のスリム化」、「厚生年金基金の大幅縮小」に伴う受け皿制度の整備の観点からの要望が高かったことがあります。このような経緯から、政府が確定拠出年金制度の導入を推進していることが伺えます。実際に、退職金制度を廃止して、確定拠出年金に移行するケースも増えており、中小企業でも普及が進んでいるという特徴があります。確定拠出年金を導入していない場合でも、その概要は知っておきたいところです。