負傷、疾病、障害、死亡の要因に応じて様々な給付があります。
1.業務災害
労働者が業務上において負傷、疾病、障害または死亡した場合の災害のことをいいます。この業務上の災害として認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」のふたつの条件をクリアしていることが必要となります。「業務遂行性」とは、労働者が労働契約に基づき、使用者の支配下において働いているときに負傷などが発生していることをさし、「業務起因性」は、業務と負傷との間に相当の因果関係があるかどうかをさします。労働基準監督署においても、この「業務遂行性」と「業務起因性」のふたつを確認した上で労災の認定をします。
「業務遂行性」と「業務起因性」の判断の仕方についてですが、例えば業務中にコンビニに飲み物を買いに行ったり、銀行にお金をおろしに行ったりして負傷した場合は、当然に使用者の支配下にない間に起こった災害ですので業務遂行性がないとして、労災は認められません。また、会社で昼休みをとっている最中に起こった災害は、使用者の支配下にありますが、業務に起因した災害ではありませんので業務災害とは認められません。ただし、会社の施設や設備の管理体制がずさんなため発生してしまった災害については、業務災害と認められる場合があります。
2.通勤災害
就業に関して住居と会社の間を合理的な経路及び方法によって往復する間に起きた災害のことをいいます。ただし、往復経路上の途中において、逸脱または中断をした場合は、その後、通勤経路に戻っても通勤災害とは認められません。例えば、仕事が終わって帰る途中に通勤経路をそれて友達の家へ夕食を食べに行った場合や帰る途中に映画館やパチンコなどに寄ったりした場合は、逸脱・中断となってしまいます。しかし、帰る途中にスーパーで食料品を買ったり、病院や美容院に立ち寄る行為などは、日常生活上必要な行為であり、逸脱・中断にはならないとされています。 給付の種類に関しては、負傷・疾病の場合は「療養(補償)給付」や「休業(補償)給付」、「傷病(補償)年金」、障害の場合は「障害(補償)給付」、死亡の場合は、「遺族(補償)給付」、「葬祭料(葬祭給付)」があり、また、労災独自の給付として「介護(補償)給付」もあります。
業務災害の認定には、「業務遂行性」と「業務起因性」のふたつの条件が揃っていることが必要です。つまり、災害が発生した場合は、事業主の支配下・管理下にある状態で災害が発生し、その負傷が業務に起因しているかどうかをみて判断します。
社員が仕事中に負傷した場合において、労災認定されるかどうか判断できない時がたまにあります。実際にあった事例ですが、業務中において社内に入ってきた野良猫を社員が触ろうとした際、指を噛まれてしまいました。この場合、労災扱いになるかどうか判断が難しいところですが、一応労災申請をしてみました。結果的にこの事例の場合、会社の周りに飲食店が多いため、野良猫が多く存在していたという状況を鑑みて、労災扱いにしてくれました。労災の判断ができないで迷った時は、とりあえず労災申請をしてみるのも良いかもしれません。
〈社会保険労務士 PSR正会員 村松 鋭士〉