政府の「新しい資本主義実現会議」において、「日本型の職務給への移行」について議論が行われており、今年の6月までに、日本企業に合ったモデルが示されることになっています。
職務給が注目され、それに適した雇用システムである「ジョブ型」雇用も注目されていますが、この「ジョブ型」ってなんでしょうか?
この「ジョブ型」については、さまざまな定義や考え方がありますが、その名付け親といわれている労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口氏の考え方などを勘案すると、次のように定義することができます。
「ジョブ型」雇用とは、企業が人材を採用する際に、 職務・勤務地・時間などの条件を明確に決めて雇用契約を結び、雇われた側はその契約の範囲内のみで働くという雇用システム。
では、政府はどのように捉えているのでしょうか?
今年2月に開催された「第14回 新しい資本主義実現会議」において、「従来の日本のメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用(職務給)の違い」というテーマで議論が行われています。
その際の資料などをもとに、政府の捉え方を紹介してみます。
□ 「ジョブ型」の反対語は「メンバーシップ型」
年功序列などの旧来的な雇用システムを「メンバーシップ型」とし、これと比較して「ジョブ型」のメリットを見出そうとしています。なお、この議論においては、「ジョブ型雇用(職務給)」とされていることから、「ジョブ型=職務給」という考え方がとられていることが分かります。
□ 「メンバーシップ型」と「ジョブ型」の違い
内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局による基礎資料において、次のように整理されています(5枚目参照)。
>> https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai14/shiryou1.pdf#page=5
□ もっと簡単にいうと・・・
上記の表なども踏まえ、「メンバーシップ型」と「ジョブ型」の違いをひと言で表してみると、次のような表現がしっくりくると思います。
「メンバーシップ型」は、“人に仕事を合わせる”もの
「ジョブ型」は、“仕事に人を合わせる”もの
「ジョブ型」の場合、“仕事に人を合わせる”ので、企業は、仕事(職務)ごとに、それに合った人材を募集・採用するということになります。
日本においても、それが雇用システムのスタンダードになれば、労働移動の円滑化につながるというわけです。
また、人(労働者)は、仕事に合わせたスキルを習得し、向上させていく必要があるので、リスキリングが必要になるというわけです。
なお、政府は、「日本型の職務給(ジョブ型雇用)」の構築・定着を目指しているわけですが、「第14回 新しい資本主義実現会議」においては、その実現に向けて、次のような方向性を示しています。
・職務給(ジョブ型雇用)の導入にあたっては、個々の企業特性に応じた導入の在り方があり、 個々の企業に合った職務給(ジョブ型雇用)の導入方法を類型化して示すことが必要。
・具体的には、企業によっては、ジョブ型雇用(職務給)を一度にではなく、順次導入する。 あるいは、その適用に当たっても、スキルだけではなく、個々人のパフォーマンスや行動の適格性を勘案するといった導入方法を類型化してモデルを示し、導入しやすくすることが必要。
「日本型の職務給(ジョブ型雇用)」については、スキル以外の要素をどの程度、勘案するのかがポイントです。事例紹介やモデルが大いに参考になると思います。大企業だけでなく、中小企業の好事例なども整理して紹介してくれるとよいですね。
〔参考〕令和5年2月 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局/資料
≫ https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai14/shiryou1.pdf