【専門家コラム】年収の壁の基礎知識~企業に求められる対応とは?~

公開日:2025年4月29日

 

 

年収の壁の基礎知識~企業に求められる対応とは?~


<社会保険労務士法人テトラ 代表社員 柳井一輝/PSR会員

 

年収の壁問題は、2025年に予定される税制改正によりさらに大きな転機を迎えます。

これに伴い、労働力不足に悩む企業にとって、年収の壁問題への適切な対応はますます重要となっています。

本コラムでは、年収の壁の基本知識、従業員・企業への影響、最新の制度変更を踏まえた企業実務対応について、社労士の視点からわかりやすく解説します。

 

年収の壁とは?~その仕組みを正しく理解する~

パート・アルバイト従業員が一定の年収を超えることで、税金や社会保険料の負担が発生します。

この収入基準(年収ライン)がいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。「年収の壁」には税制上の壁と社会保険上の壁の2種類があり、具体的には以下の通りです。

年収 内容

100万円(税制上)

住民税の支払い義務が発生
103万円(税制上) 所得税の扶養控除対象外に
106万円(社会保険上) 社会保険強制加入(※企業規模要件あり)
130万円(社会保険上) 被扶養者資格喪失、自身で社会保険加入
150万円(税制上) 配偶者特別控除の減額開始
201万円(税制上) 配偶者特別控除対象外に

特に106万円・130万円の壁は、社会保険料負担に直結するため、従業員の就業意欲に大きな影響を及ぼします。

また、今年「103万円の壁」が最大160万円まで引き上げられることに伴い、特定扶養控除は年収上限が103万円から150万円に、配偶者特別控除は150万円から160万円に引き上げられる予定です。

 

年収の壁が従業員と企業に及ぼす影響

年収の壁による従業員と企業への影響は、主に次の二つに整理できます。

・従業員の就業調整

パート、アルバイトについては、年収が壁を超えないように労働時間を自主的にセーブする行動が見られ、特に年末に向けて就業制限が集中します。このため、企業は年末に人手不足に陥るリスクがあります。

・手取り収入の減少懸念

壁を超えると、保険料負担増により所得が減少するため、フルタイム勤務や昇給を躊躇する傾向が強まります。また、最低賃金が上昇していることに伴い、昇給に合わせて就業時間を短くするケースも見られます。

 

企業に求められる対応策

 

プロフィール

特定社会保険労務士 柳井一輝

社会保険労務士法人テトラ 代表社員(https://tetra-sr.jp/

2018年に社労士登録後、2020年より法人化、代表就任。
現在は、個人事業主から上場企業まで、労働法・社会保険関係の手続代行、労務相談、給与計算代行、人事評価制度構築支援、M&Aの労務DDなどクライアントが本業に集中し、安心して成長できるように人事労務全般の支援を行う。著書に新日本法規「新しい働き方対応 会社経営の法務・労務・税務」共同執筆(2022年)がある。
趣味はサウナと読書。


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