【専門家コラム】介護休業取得促進のための雇用環境整備とは? 人事担当者が押さえておくべき実務のポイント

公開日:2025年4月26日

 

介護休業取得促進のための雇用環境整備とは?

人事担当者が押さえておくべき実務のポイント


<社会保険労務士事務所Bricks&UK 代表 四宮寛子/PSR会員

 

令和6年改正育児・介護休業法により、企業は介護離職防止のための個別周知、意向確認、および雇用環境整備等の措置を講ずることが義務付けられました。

介護と仕事の両立を支援し、従業員が安心して介護休業等を取得できる環境の構築が求められています。

今回は、介護休業等を取得しやすくするための雇用環境整備の措置にフォーカスして、その具体的内容と人事担当者が押さえておくべき実務のポイントについて解説します。

介護と仕事の両立を支援するための雇用環境整備とは?

雇用環境整備は以下の4つがあり、いずれかの措置を講ずることが義務づけられます(令和7年4月1日施行)。

①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

③自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供

④自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知

 

それぞれの具体的な内容は次のとおりです。

①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

介護に対する事前の心構えや自社の介護休業制度の概要などを全従業員に周知することが望ましいとされています。

ただし、アルバイトを大量採用している飲食店など、その実施が難しい場合には動画によるオンラインでの研修も認められていますが、研修の受講の有無について管理する必要があるので注意しましょう。

もしくは、管理者に研修を受講させたうえで、各事業所の従業員へ周知するという方法もあります。

②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

介護に関する悩みを抱える従業員が安心して相談できる窓口を設置します。

形式的に窓口を設けるのではなく、対応する担当者名も周知するようにしましょう。

なお、全国に支店をおいているような企業の場合は、メールアドレスやURLを定めて相談窓口とする方法でもよいとされています。

相談窓口には以下の機能を持たせると良いでしょう。

  • 介護休業・介護両立支援制度等の手続き方法の周知
  • 公的な介護サービスを受けるために必要な諸手続きが済んでいるかどうかの確認
  • 介護休業等に関するハラスメントの相談対応

③自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供

介護休業・介護両立支援制度等を実際に利用した従業員の声をヒアリングし、事例として公表することにより、従業員から申し出をしやすい環境を整備することがねらいです。

取りまとめた文書等を配布、もしくはイントラネットへの掲載等により従業員へ周知します。なお、事例は特定の職種や雇用形態等に偏らないようにしましょう。

④自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知

企業が介護休業・介護両立支援制度等を積極的に推進する姿勢を示すことで、従業員が安心して制度を利用できるようになります。周知の方法として、以下が考えられます。

  • 企業のトップが制度の利用を推奨するメッセージを発信
  • 社内掲示板やイントラネットにおいて、介護休業・介護両立支援制度等の利用手順や支援内容を分かりやすく掲載

なお、企業は雇用環境整備を実施するにあたって、複数の措置を講ずることが望ましいとされています。

 

雇用環境整備の措置を講ずるために人事担当者が取り組むべきこと

雇用環境整備の措置を講ずる際に、人事担当者が押さえておくべき実務のポイントは次のとおりです。

①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

研修内容は最新の法令や社内規則に基づいて定期的に更新するようにしましょう。

研修の実施方法については、従業員の負担を考慮し、eラーニングや動画コンテンツなど、多様な受講形式を用意することで受講率の向上が期待できます。

②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

相談対応者には適切なトレーニングを実施し、介護に関する基礎知識を習得させるようにしましょう。

また、匿名で相談できる仕組みを導入すると、より利用しやすくなります。相談対応の履歴は適切に記録し、社内の支援体制の改善に活用するとよいでしょう。

③自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供

事例提供の際には、個人情報の保護に留意し、必ず当事者の同意を得ておきます。

また、取得事例を単なる成功談とせず、困難な点や解決策も含めて紹介するようにしましょう。定期的に新たな事例を追加することも大切です。

④自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知

制度の説明にとどまらず、取得しやすい職場風土を醸成することも欠かせません。

そのためにも、企業トップのメッセージを的確に発信することは効果的です。

制度利用のハードルを下げるために、積極的に制度の利用手順や支援内容を発信していきましょう。

 

現代社会において、従業員の仕事と介護の両立を支援することは企業にとって重要な課題の一つです。

従業員が介護休業等の制度を利用しやすい環境を整備することによって、優秀な人材の流出を防止することにもつながります。

厚生労働省のHPにも役に立つツールが掲載されていますので、参考にしてみてください。

 

【参考/厚生労働省】

仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~

パンフレット「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」       

企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル

介護休業取得事例記載例

介護休業及び両立支援制度取得・利用促進方針周知例

 

プロフィール

四宮寛子 

特定社会保険労務士/医療労務コンサルタント

社会保険労務士事務所Bricks&UK(https://bricksuk-sr.biz/)代表 

大学卒業後、大手銀行関連会社にて給与計算、労働・社会保険手続きを担当。2006年社会保険労務士試験合格、翌年開業。中小企業の経営者に寄り添った労務顧問サービスを展開、助成金の申請にも力を入れている。近年は社労士業務の製販分離にも着手し、手続き業務や給与計算業務の生産管理システムを導入。業務の可視化を行い、誰でも業務に当たれるようにしている。著書に新日本法規「新しい働き方対応 会社経営の法務・労務・税務」共同執筆(2022年)がある。

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