[経営人事改革の視点]情動レベルのマネジメント
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
やまびこ挨拶
小売店や飲食店などで、“やまびこ挨拶”と呼ばれる挨拶がよく行われています。
やまびこ挨拶とは、ひとりの店員が『いらっしゃいませ』と言うと、フロアにいるほかの店員も同じように『いらっしゃいませ』と声を出す方法をいいます。
やまびこ挨拶は、顧客来店の情報共有や活気の演出などのほか、小売店では万引き防止の目的もあるようです。
それを行うことで業績向上に一定の効果があると、経験的には考えられております。
やまびこ挨拶に一定の効果があることは間違いないですが、効果を実現する根底には人間の集団形成本能があると考えられます。
霊長類では、身体接触を伴うコミュニケ-ションとして「毛づくろい」が非常に広く行われています。
そうした身体接触以外でも、さまざまなコンタクトコールを交わします。
コンタクトコールとは、群れや個体間のコミュニケーションのために使用される音声信号で、他の個体と場所や状況を共有したり、群れの一員であることを確認するために使われたりします。
また、毛づくろいやコンタクトコールによって、幸せホルモンの一つであるエンドルフィンの分泌量が多くなると考えられています。
それによって、仲間意識が高まったり、共同注意(獲物や外敵への集団的な注意)の機能が高まったりすることがあるようです。
人間も生物学的には霊長類の一員であり、集団を形成し狩猟採集を行って数百万年を生き抜いてきたので、奥深くにある本能や生理作用は驚くほど共通なのです。
やまびこ挨拶は進化的な背景を持つコンタクトコールの一種であると解釈すると、店舗においてそれを行うのは非常に合理的と考えられるのです。
情動レベルのマネジメント
プロフィール
西川幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員