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【専門家の知恵】精神疾患(精神障害)とメンタルヘルス(こころの健康)について

<岡崎社会保険労務士事務所 所長 岡崎 晃/PSR会員>

 今、新型コロナ下における日常生活の変化やリモートワークの普及やなど、ストレスが高まる傾向にあると言われます。事業所において、メンタルヘルス不調で休職や退職をする社員も少なくありません。

 2022年4月からのパワハラ防止法の完全施行も、心理的負荷の増大や精神疾患の発症の問題をクローズアップさせています。経営者や管理職にとって、メンタルヘルス(こころの健康)に関するより深い認識が求められています。

◆精神疾患(精神障害)とは?

 精神疾患と精神障害、どう違うのでしょう。精神疾患は医療の世界で使い、精神障害は行政や福祉サービスの世界で使う、という言い方もされます。

 例えば、2013年から日本における四大疾病に精神疾病が加わり、五大疾病と言われるようになりました。(がん、脳卒中など脳血管疾患、心筋梗塞・狭心症など虚血性心疾患、糖尿病、「精神疾患」の5つ)
 一方、「精神障害」という言い方は、国際的な診断・統計基準であるDSM(アメリカ精神医学会「精神障害の診断と統計マニュアル」)やICD(世界保健機関・WHO「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」)における具体的な分類の中で、多く使われています。
 私は、個人的には、精神“疾患”よりは精神“障害”のほうが、日常を生きるうえでの“障害”(=生きづらさ)を持っており、社会や職場、周りの人が支えたり支援する必要がある状態、というニュアンスが感じられる気がします。

 12月17日に大阪市北区の心療内科クリニックで起こった放火殺人事件は、その死者の多さによる重大性に加えて、このクリニックが休職した人の職場復帰を支援する貴重な場所であったことにも、大きなショックを受けました。
犯人自身もこのクリニックの診察券を持っていたとのことで、何らかの精神的な不調を持っていた可能性もあります。
この事件によって、短絡的に精神の不調を持った人は怖い、という差別意識を持つことは全く筋違いです。
また、精神の不調をきたしたり、精神障害を患う可能性は、誰にでもあり得るという認識が大切です。
日ごろから、こころの変調に本人も周りも早めに気づいて、ストレスの軽減や気分転換や運動、カウンセリングや専門医の受診等が必要です。

◆メンタルヘルス不調により長期の休職や退職をする労働者は増えています

 人事労務分野では、「メンタルヘルス」という言葉がよく使われます。例えば、厚生労働省では「みんなのメンタルヘルス 総合サイト」(みんなのメンタルヘルス|厚生労働省 (mhlw.go.jp))を運営しています。メンタル(こころ、精神)とヘルス(健康)を合わせた言葉で、こころの健康ということです。メンタル不調とは、こころの健康状態に不調・変調があるということです。

 ここで、厚生労働省による労働安全衛生調査(令和2年・実態調査)を見てみます。連続1ケ月以上休職又は退職した労働者がいた事業所に関する調査結果です。
過去1年間に、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で9.2%です。
これを事業規模別の内訳を見ると、規模が大きい事業所ほど休業した労働者が居る事業所の比率が高くなっています。これは、ある意味当然かもしれません。人数が多い程、そういう人が発生する出現率が高いでしょう。
しかし、何と、常用労働者数に占める1ケ月以上休職した労働者の割合を見ても、やはり大規模事業のほうが高くなっています。
組織が大きくなるほど、管理体制も厳しくなったり、自分の仕事上の役割や達成感が見出しにくくなる傾向も考えられるのかも知れません。

 更に、産業別では、休職する労働者の割合が高い順に見ていくと、情報通信業、電気・ガス・熱供給・水道業、学術研究,専門・技術サービス業、複合サービス事業が高くなっています。
情報通信や専門技術サービスなど、ストレスが高い傾向が考えられます。

 図表 okazaki 

 「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)『結果の概要』 第1表過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者 又は退職した労働者がいた事業所割合及び労働者割合」より作成

◆こころの病気を知る

 職場においてメンタルヘルスの推進を行う上で、こころの病気について経営者や管理者が基本的な知識を持ち、日頃から社員のこころの健康管理を進めていくことが求められます。ストレスチェックもその一つです。

 誰でもこころの病気になる可能性があること、本人や周りが不調を感じたら、休養を取ったり与えたり、ストレスの原因を考えて適切な対応を行うことも必要です。
心療内科に掛かることは、整体やマッサージに行ったり、歯医者に行くことと何ら変わらないという意識を持つことも重要です。
こころの病気と言われるものには、様々なものがあります。
職場のメンタルヘルス問題で最も関りが多いのが、「うつ病」です。また「パニック障害・不安障害」という診断名を見ることもあるかもしれません。
労災認定に関連して、PTSDの名前を聞くこともあると思います。
ここでは、もっとも身近な病気である「うつ病」についてみてみます。
うつ病の生涯有病率(罹患率)は10数%と言われています。数人に一人は一生涯のうち、うつ病を発症します。
気分の落ち込み、楽しめないなどの精神症状に加えて、食欲がない、眠れない、疲れ易いなどの身体症状も加わります。
背景には、精神的、身体ストレスがあると言われますが、発症の原因は正確にはよく分かっていません。感情や意慾を司る脳の機能の不調によるものと考えられています。
自分で感じる気分の変化だけでなく、周りからみてわかるサインもあります。表情が暗い、反応が遅い、落ち着かないなどの変化があれば、周りが声を掛けて上げることが大切です。
うつ病は最悪の場合、自殺にまで進むケースもあるため、早い段階で、ストレスの軽減を図ったり、休養を取らせることが必要です。
 うつ病と思ったら、早めに専門医への相談を働き掛けることも重要です。

岡崎 晃(おかざき あきら)
岡崎社会保険労務士事務所 所長
(http://www.roum-kenkyu.jp)
社会保険労務士・精神保健福祉士

 

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