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【専門家の知恵】評価をパワーに変える

評価をパワーに変える

<オフィス クロノス 久保 照子/PSR会員>

 

 働き方改革が進む中、バブルと言われるほど人事評価制度に注目が集まっている。

 厚労省の“人事評価制度整備助成金”が政策を後押ししている。

 社長の評価が会社の評価という会社、明快かつワークしているという会社と様々であろう。人事評価制度は人を育て、会社の利益が上がる仕組みと筆者は捉えている。

 この人事評価、実態はどうなのか。 産業能率大学が行った興味深い調査がある。従業員数100人以上の上場企業に勤務し、部下を1人以上持つ課長を対象に行ったものだ。(第4回 上場企業の課長に関する実態調査 2018年1月 学校法人 産業能率大学 WEB公開) 

 働き方改革の中心を担う課長の大変さがひしひしと伝わってくる。

 気になる人事評価に注目すると、課長のお悩みのトップは“部下がなかなか育たない”、次に“部下の人事評価が難しい”。 9番目に“部下の人事評価のフィードバックがうまくできない”だった。

 職場全体に関して、3年前とは職場の状況が変化している、99.2%がプレイングマネジャーでありマネジメント業務に支障を感じている、部下の悩みが増加、という状況。

 職場状況の変化については、働き方の多様化、外国人社員の増加をあげている。 課長は組織からの期待も髙く、部下育てもしなくてはならない。 そして、それは自分がやるのだ、という認識も高い。 

 しかし、最終的になりたい立場については現状維持、プレーヤーに戻る、と課長の約5割が出世を望んでいない。 

 


◆課長の悩みは組織の悩み

 部下育成に関する悩みが多いが、今後強化したい自身の能力は何かについて、トップは“語学力”と“戦略的にものごとを考える力”。 “部下を育成する力”は4位。 “部下を適正に評価する力”は21項目中14位であった。

 部下が育たないという問題は、“人事評価が難しく”、“人事評価のフィードバックが上手くできない”、という調査結果とリンクしている。 現場任せでは限界がある。 採用、教育、評価、成長という仕組みが組織的に動いているのか、チェックしてみる必要がありそうだ。

 ① 査定のためだけの評価になっていないか
 ② 評価と教育が連動しているか
 ③ 評価が給与と連動しているか
 ④ 評価制度が現状に合わなくなっていないか(バブル時代の昭和型のまま)
如何だろうか。 

 また、課長の能力アップに人気のない“評価”だが、“選択”という視点から見たとき、輝いてくる。

 


◆評価は選択の積み重ね、現実の把握

 私達は紅茶かコーヒーかというささいな選択から、会社を選ぶなど重要な選択をして今日の自分に至っている。

 その中で評価は、自分ではない他人が強制する選択と捉えることができる。 つまり、人は自分をどう見るか。

 “ジャム研究”で有名なコロンビア大学・ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガーは著書“選択の科学”(2010年刊行 文芸春秋)で多角的な視点から選択の複雑さを浮き彫りにしている。 一部抜粋する。

 “私達は自分が描く自己像と他者が描く自己像を一致させることを重視するため、自分が他人に本当はどう思われているかを知るための手がかりを、たえず他人の行動から読み取ろうとしている。

 大幅に違うと幻滅することもある。 この食い違いにどう対処するのかが自己の確立に需要になる“

 どのようにして世間に合わせようとするか、その手がかりを知るうってつけなものとして“360度評価法”にふれている。

 人事考課を上司や同僚、顧客等から無記名で評価するものだ。 研修での成果を知る上でも利用する。 

 その評価法を、彼女はビジネススクールの新入生全員に、元の職場の同僚や顧客、現在の同級生から受けることを義務付けた。 毎年9割以上の学生が、自他の著しい認識ギャップを知る。自分を人望がある重要なチームの一員だと考えていたのに、実際には凡庸か、一緒に働き難い相手とみられていたり、頭が切れると思われていたが管理職むきの人材とはみなされていなかったり。他者による認識が、長所についても短所についても人によって大きく違うことを知って驚く。 

 認識ギャップが生じる理由として彼女は学生に言う。 “あなた方は自分の行動の背後にある意図がわかっているから、自分を正当と考える。でも人は自分のみえるものだけに反応するものだ、と。

 さらに、他人は相手の行動を自分の経験のレンズを通して解釈するか、または外見の憶測から判断し、その人物像についての一般的な固定観念を通して解釈すると。

 人によって違うのさ、ということではなく、私達の日々の行動は他人によって解釈され、ひいては誤解されるのである。 他人による評価は現実の把握の手段として役立つ。 本当の自分を知る、人にどう思われているかがわかれば対策のたてようがある。 私達は他者の描く自分をのぞき込み、そこに自分の描く自己像を見つけることを何よりも望んでいる、と述べている。

 評価の本質、そして選択が、どれほどの力を持つものかを認識することが、悩み解決の扉を開く力となるのではないだろうか。 部下が育ち、課長の荷は軽くなり、増々人も組織も成長する仕組みとなることを願う。

 

 

プロフィール

sharoushi chie
人材育成コンサルタント 社会保険労務士 久保 照子
オフィス クロノス

 

 

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