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【専門家の知恵】「中途採用比率の公表」が2021年4月から義務化へ

「中途採用比率の公表」が2021年4月から義務化へ

採用定着コンサルティングOFFICE サン&ムーン 代表 社会保険労務士 田中 亜矢子/PSR会員

 

 政府が全世代型社会保障改革の一環としておこなう「雇用制度改革」において、2021年4月から従業員301人以上の大企業に、中途採用の比率公表を義務付ける方針が発表された。中途採用比率の公表義務化により、求職者と企業側のマッチングを促し、大企業に伝統的に残る新卒一括採用が中心の採用制度の見直しが期待される。今回は2040年を見据えた働き方改革の概要をふまえ、その目的と背景についてお伝えしたい。

 

◆2040年を見据えた「マルチステージ型」を目指す働き方改革

 人生100年時代を迎える中、働く意欲のある労働者がその能力を十分に発揮できるような雇用制度改革は、今後の大きな課題である。政府は、少子高齢化が進み、ライフスタイルが多様化する状況を鑑みて、年金・労働・医療・介護など、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討している。その内容は、以下の3つの原則を念頭に置いたものである。

(1)就労しやすい社会づくり
(2)個性・多様性を尊重し支えていく環境づくり
(3)社会保障の持続可能性の重視

 今後、我が国の最大の課題は、急速に進む少子高齢化である。ライフスタイルの多様化や技術の進展をチャンスととらえ、すべての人が個性を活かすことができる社会を創れば、少子高齢化という壁を克服できる。生産年齢人口が減少する中でも、就業者数を維持するために年齢にかかわらず、学び、働くことができる環境の整備が必須である。

 我が国に生まれる子供の半数が100歳以上の人生を生きるといわれる中、新卒で一斉に会社に入り、その会社一社で勤め上げ、定年で一斉に退職して老後の生活を送るといった「単線型の人生」は時代に適合しなくなる。そこで注目されているのが、何歳になっても学び直しをしながら、新たなチャレンジができるような複線的かつ多様な「マルチステージの人生」である。

 人口知能(AI)やロボット、ビッグデータといった第4次産業革命がもたらす技術革新は、私たちの生活を画期的に変えていく。これらの時代の大きな変化の中で、今回政府から発表された中途採用比率の公表義務。2040年を展望すると、高齢者の人口の伸びは落ち着き、現役世代が急減する。その新たな局面に対応するための政策課題が「誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現」である。多様な就労・社会参加の施策を講じることは急務なのである。

 それでは、つづいて中途採用比率公表の目的と具体的内容についてお伝えしたい。

 

◆柔軟な働き方を可能にする社会の実現へ向けて

 人生100年時代に対応する社会の実現のためには、雇用の期間を縦に延長することとともに、現役の間から多様で柔軟な働き方を広げて雇用の選択肢を横にも伸ばしていくことも必要である。

 そのために、兼業・副業など「多様で柔軟な働き方の推進」や、70歳までの就業機会確保による「中高年の就労促進」、若年層の就労促進と「新卒一括慣行の見直し」の加速化をはかっている。企業には、キャリア相談の実施や、サバティカル休暇制度(長期間勤務者に対して付与される使途に制限のない長期休暇)の導入・促進も推奨されていく。

「中途採用の比率公表義務化」はこれらの施策の一環である。しかし、現状、採用者全体に占める中途採用・経験者採用比率は企業規模が大きくなるに従って減少し、従業員数5,000人以上の規模では37%にとどまる。

 このような中、転職希望者が中途採用に関して企業に開示して欲しい情報は「正規雇用の中途採用実績」であり、その割合は54%と最も高い。これらをふまえ、個々の大企業に対して中途採用比率の情報公開を求めるわけだが、具体的には「労働施策総合推進法」を改正し、大企業(301人以上規模)における「正規雇用労働者の中途採用・経験者採用比率」をインターネットの利用といった方法により求職者たちが容易に閲覧できるようにする。

 経済産業省の中途採用・経験者採用協議会のホームページ(※)において、中小企業やベンチャー企業の中途採用・経験者採用の取組内容や成果や課題が紹介されているので、ぜひ参考にしていただきたい。

※参考:経済産業省「中途採用・経験者採用協議会」

 

 

プロフィール

 
代表社会保険労務士  田中 亜矢子

 

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