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【専門家の知恵】AIの台頭により何を考えるべきか(下)

AIの台頭により何を考えるべきか(下)

<SRC・総合労務センター 佐藤 正欣/PSR会員>

 

 AIという新技術の台頭を前に、私たちはどのように向き合うべきかというテーマで、全2回にわたってお送りしているところであるが、ここで前回までの内容を振り返っておこう。

 前回では、AIとは何か、AIで私たちの仕事はなくなってしまうのかという点について触れた。そこから筆者が導き出した現時点における見解は次のとおりである。

 まず一つは、人工知能の定義が明確にされていない以上、どのような技術発展を遂げるかは未知数であり、不確定要素が強い状況下にあるということを述べた。

 もう一つは、ME化・IT化といった過去の時代を振り返りながら、いつの時代も、新技術の台頭で私たちの仕事がなくなるような似た議論がされてきたことを述べた。しかし、私たちの仕事はなくなっていない。AIもこれと同じで、便利なツールとして期待のできる技術ではあるが、それによって、私たちの仕事がなくなるということにはならないことを論じた。

 これを踏まえて今回は、とはいうものの、より便利なものとなるであろうAI技術の普及が進んでいくなかで、私たちはどのように仕事と向き合うべきかを考えてみたい。

 

◆人間にしかできないことが問われる時代に!

 前回の記事で触れたとおり、これまでも新技術の出現によって労働集約的な定型業務が縮小化されてきていることは事実である。AIが身近なものとなれば、より高度な処理を期待できると想定されているため、この動きはより加速度的に進んでいくことが予想される。新たな技術に代替させることで、無駄・無理・ムラを極力なくし、経営の合理化・効率化を図り利潤追求することが資本主義経済社会の姿だからだ。

 そうなると、より私たち人間にしかできないことは何か?ということが、問われる時代になるはずだ。それは、ありていな言い方をすれば独創性や工夫、クリエイティブさであると思う。また、自社の顧客を驚かせたり、感動させたりする心情的な部分であると思う。また、泥臭くも温かみが感じられる人間ならではの心のおもてなしだと思う。なぜなら、これらは現時点でAIが苦手とする部分と言われているからだ(もっとも、究極において、さらなる未来においてはわからないが…)。この点について、先で触れた中島・松原両氏は、「いまのAIには『おもしろさの評価』ができない」と端的に表現している。

 こうした点を踏まえると、労使双方で、常に「人間だからこそ何ができるのか」という視点を持って、サービス提供を考え、仕事に臨む姿勢が必要となってこよう。使用者側は、従来通りの漫然とした経営を続けていてはまずいし、労働者側は考えもせず指示された仕事を単に処理しているだけだと未来は厳しいものになってしまうかもしれない。

 また、国の政策も重要となってこよう。AIといった新たな技術を扱うことができる人材を育成していく教育の場を整備する必要があるのではないか。ME化やIT化の時代にも議論されてきたことだが、どんなに素晴らしい技術でも、それを利用する側の人間が扱う術を知らなければ、宝の持ち腐れになってしまうからだ。さらには、新しい技術によって、私たち人間の仕事に対する役割が変化していく可能性を踏まえると、職業訓練の充実や、雇用のセーフティーネットのあり方について再考する必要があることも付言しておきたい。

 

◆おわりに

 これらを踏まえて総括してみよう。

 第一は、AIが徐々に私たちの生活に入り込みはじめていることは事実だが、発展途上にある分野だけに可能性は未知数である。ゆえに、私たち人間が担っているあらゆる職務が本当にAIに代替できるか否かは、現時点で明確にわかっていない。様々な不確定な情報から漠然とした不安を抱く必要はないと考える。

 第二は、何でも物事には功罪があるという点だ。新技術の普及も、一面においては便利でも、他面には不便さが残るのがこれまでの常である。AIの普及は、自動化・省力化が期待されることだが、合理化・効率化の行き着く先は無味乾燥なものになりやすい。人間だからこその価値提供があるという点を見失うべきではないと思う。

 第三は、第二と関連するが、仮にある部分の職務がAIに代替したとして、それによって浮いた時間は、これに付随する職務として、心を持つ私たち人間こそが対応すべき新たな職務として発生することが考えられる。

 第四は、それが何であるのか…、AIをうまく活用するために、私たちはこれまで以上に知的活動をブラッシュアップし続ける努力をしていかねばらないのではないか。なぜなら、あくまでもAIを扱う主体は人間であるからだ。

 最後に、私たちは自分を見失わないためにも、自社の企業理念に照らして、生身の人間が担うべきサービスとして何があるのか、何をすべきなのかを不断に検討すべきである。そして、そこをより一層強固なものへと発展させていくことが、いつの時代にも求められる必要な視点だと思うのである。

 

 

プロフィール

psr sato
特定社会保険労務士 佐藤 正欣
株式会社エンブレス 代表取締役  SRC・総合労務センター 副所長(http://www.e-src.com
輝く未来のオンリーワン企業を支援するため「大企業のマネをしない中小企業独自の労務管理」を理念とする。社会保険・労働保険の諸手続きをはじめ、給与計算等の事務手続き面におけるアウトソース業務と並行し、経営・労務相談、就業規則策定等のコンサル業務も多数手掛けている。また不定期に実施するセミナーや社員研修に定評がある。

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