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【専門家の知恵】AIの台頭により何を考えるべきか(上)

AIの台頭により何を考えるべきか(上)

<SRC・総合労務センター 佐藤 正欣/PSR会員>

 

 最近、あちらこちらでAI(Artificial Intelligence)という単語を目にする機会が増えた。某テレビ局でAIと共同生活をする設定のドラマが放送されていたのをみて、時代の変化を感じずにはいられない。それだけ私たちの生活に身近なものとなる日が近いということなのだろうか。ただ、最近の単語かと思いきや、AIという言葉が誕生したのは1950年代である。長い歴史が存在していることに驚いた。 

 さて、そんなAIであるが、2015年に行われた野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、現在ある約半分近くの仕事がAIの台頭によって代替される可能性が高いことを示した。この発表を基にして、(当該発表の真意とはいささか異なると筆者は考えているからであるが…)人間の担う仕事がAIによって奪わるといった危機感を煽る論調が増えたように感じる。このような記事を読めば、AIという未知の技術だけに一抹の不安を抱いてしまう。しかし果たして本当にそうだろうか。そこで今回はAIという新技術を前にして、私たちはどのように向き合うべきかを全2回の構成で考えてみたい。

 

◆AIとは何か

 AI(人工知能)は、これまで紆余曲折を経て第三のブームに入ったと言われている。人工知能学会によれば、人工知能の研究は「人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする立場」と、「人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場」の二つがあるとし、「実際の研究のほとんどは後者の立場だ」と述べている。しかし、この人工知能が一体全体なんであるのかという明確な定義はまだなく、研究者によっても、その定義づけは様々らしい。松尾豊氏(東京大学特任准教授)によれば、現時点の人工知能は「人間の知的活動を真似ているだけ」で「本当の意味で人間のように考えるコンピューターはまだ実現していない」と指摘しており、「人工的に作られた人間のような知能」だと説いている。これらから、まだ成長過程にある分野だけに流動的な技術であることを窺い知ることができる。

 

◆AIで仕事はなくなるのか

 では、こうした現在進行形にあるAIに人間の仕事は奪われてしまうのだろうか。これに似た話として過去を振り返ると、1980年代のME化や1990年代のIT化を想起できる。ME化は、減量経営の際の製造業に係る生産工程の合理化策として、ブルーカラー労働者が有する熟練技能を生産システムとして代替させたものであった。一方のIT化は、ホワイトカラーを含めたあらゆる職種の働き方に大きな影響を与えた。このように、それぞれの時代で、新たな技術が広く社会に浸透するたびに同じような議論はあった。確かに、新たな技術に代替させることで、定型的な仕事は減ることはあったものの、逆に創意工夫や高い専門性が要求される仕事が増えていったことも事実である。

 今回のAIに関する影響については、日本のAI研究の第一人者とされる松原仁氏の発言が興味深い。日本が置かれている人口減少社会を踏まえて「日本では『AIが仕事を奪う』なんてところまでいかない」、「労働力が減っていく部分をAIやロボットが補ってくれて、ちょうどバランスがとれるんじゃないかって」と述べている。

 これらから共通して窺い知れることは、新しい技術の台頭によって、私たち人間の有する仕事のあり方が変化しているということではないか。一部では、人間の仕事がAIにすべて代替され、AIによって生み出される新たな仕事もAIに取って代わられるというような乱暴な議論をする論者も見受けられるが、先で触れた中島氏と松原氏の対談のなかにおいても、人間には当たり前にできることが、AIには苦手とする部分も存在し、残された課題が多いことを指摘している。とても興味深く、素人にもわかりやすく語られているので、是非一読されることをお勧めしたい(中島秀之(東京大学特任教授)・松原仁(公立はこだて未来大学教授)日経BP社連載記事よりhttp://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/ai/071500001/?i_cid=LfTop)。

 したがって筆者は、AIが今後広く社会に普及したとしても、便利になることはあっても、人間の仕事はなくならないと考えている。だから、いたずらに不安を抱く必要はないのではないだろうか。あくまでAIも人間が扱う便利なツールの一つだという認識は持っておくべきだと思うのである。

 

 

プロフィール

psr sato
特定社会保険労務士 佐藤 正欣
株式会社エンブレス 代表取締役  SRC・総合労務センター 副所長(http://www.e-src.com
輝く未来のオンリーワン企業を支援するため「大企業のマネをしない中小企業独自の労務管理」を理念とする。社会保険・労働保険の諸手続きをはじめ、給与計算等の事務手続き面におけるアウトソース業務と並行し、経営・労務相談、就業規則策定等のコンサル業務も多数手掛けている。また不定期に実施するセミナーや社員研修に定評がある。

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