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【専門家の知恵】“褒める”とは管理職の育成である

“褒める”とは管理職の育成である

<SRC・総合労務センター 佐藤 正欣/PSR会員>

 

◆褒めることへの礼賛

 ハラスメント絡みの世間の認識や法整備が進み、企業では怒鳴る・厳しく叱責するような指導はご法度である。加えて、若い世代の指導・育成でこんなことをしたら、付いてこないばかりか、辞めてしまうだろう。だからだろうか。いつしか“褒めて伸ばす”という指導・育成方法が礼賛され脚光を浴びるようになった。

 ここで、誤解のないよう断っておくと、筆者は“褒める”ことを否定している訳ではない。大切な指導・育成方法の一つだと思う。なぜなら、褒めることは、相手を肯定することである。うまく機能すれば、褒められた相手方は、やる気が出たり、自信に繋がったりするからだ。とはいえ、“相手を褒める”という行為は、簡単なようで実は奥が深く、難しいものである。以下で詳しくみていこう。

 

◆褒める時は、より具体的に!

 では、冒頭のA氏は、なぜ部下を怒らせてしまったのだろうか。それは、褒めたつもりが、部下からすると馬鹿にされたと感じたからである。その発した言葉とは「最近調子いいね!頑張ってるよね!!」である。一見すると、これの何がいけないの?と思うだろう。ところが、部下から言わせると、“何が・何を”が抜けているから、子馬鹿にされたように感じたというのだ。筆者は、これは当たり前すぎて見失いやすい点だと考える。「部下の指導・育成」=「褒める」ということがマニュアル化された弊害だと感じるからだ。褒めて伸ばすことは管理職であれば誰しもが持っておきたい大切な視点である。しかし、ただ褒めれば良いというものではない。ただ褒める、とりあえず褒めるという行為は、形の上で褒めているに過ぎず、内容が曖昧となりやすい。だから、言われた側からすると、何が?となってしまう訳だ。こうならないためには、より具体的にポイントを絞って褒めた方が良い。例えば、「前回まで〇〇が理解できていなかったが、今回は〇〇ができるようになったことはもとより、××まで目が行き届くようになって素晴らしいと思うよ!」といった具合だ。より具体的に的を絞って褒められた部下は、この人は自分のことをよく見てくれていると感じ、上司への信頼感も増すばかりか、自信ややる気へと繋がりやすい。

 

◆管理職自身の成長へ

 そう!管理職が部下個々人を注意深くみていないと、具体的に褒めることができないのである。だから、部下を褒めるという行為は、まず管理職の育成なのである。管理職がアンテナを高く張る訓練をすることで、部下個々人の仕事ぶりがよく見えるようになる。その先に褒められた部下のやる気や自信の醸成があるのである。企業において、褒めるという行為は、部下の指導育成方法の一つと捉えられる傾向にあるが、順序が逆だと思うのである。もちろん、誤りではないが、第一義的には管理職育成のための手法だと筆者は考えている。まずは、上司自身の管理職としての成長なのである。

 ところで、どの企業も限られた人材で組織することが多い昨今、管理職とはいえ、プレイングマネジャーであることが一般的だ。だから、管理職の立場からすれば、自分の担う仕事も大変なのに、個々人の細かいところまで目配りできないと言うかもしれない。であるならば、企業はその管理職に対して下手に部下を褒めることをさせない方がよい。部下といえども相手も立派な大人だ。上司が自分のことをきちんと見た上で本心から褒めているのか、そうでないか解るからである。

 

◆おわりに

 よく他人の欠点を見つけ出すことは容易である反面、良い面を挙げることは難しいと言われる。しかし、部下を褒めて伸ばすことが上手な上司は、実によく部下のことを見ている。そして褒める際の言葉がとても具体的だ。指導しなければならない時も、まず最初に良い点を探し出して、そこをより具体的に褒めている。その後にダメな点(指導したい部分)を告げる。だから、相手の心に響いて届く。これができているか、いないかが褒め上手な上司か、褒め下手な上司かを分ける決定的なポイントだと言えないだろうか。

 自社の人材を“褒めて伸ばす”よう機能させるためには、管理職層が個々の部下に対して目配りできているか否か。企業側として、まずここを出発点として確認することを忘れてはいけないと思うのである。

 

 

プロフィール

psr sato
特定社会保険労務士 佐藤 正欣
株式会社エンブレス 代表取締役  SRC・総合労務センター 副所長(http://www.e-src.com
輝く未来のオンリーワン企業を支援するため「大企業のマネをしない中小企業独自の労務管理」を理念とする。社会保険・労働保険の諸手続きをはじめ、給与計算等の事務手続き面におけるアウトソース業務と並行し、経営・労務相談、就業規則策定等のコンサル業務も多数手掛けている。また不定期に実施するセミナーや社員研修に定評がある。

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