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【専門家の知恵】経営者の報酬と年金の減額

経営者の報酬と年金の減額

<コンサルティングハウス プライオ 大須賀 信敬/PSR会員>

 

◆年金減額となる基準額が引き下げられた

 国が支給する老後の厚生年金を老齢厚生年金という。この老齢厚生年金は無条件に全額が支払われるわけではなく、働いていることによる収入がある場合には、一定のルールに基づいて減額されることがある。国が支払う老後の年金は、定年退職等による「稼得能力の喪失」を補てんするための制度だからである。具体的には、社会保険に加入して勤務している場合に、「1ヵ月の年金額」「1ヵ月の報酬額」「過去1年間に支給された賞与を12で割った額」の3つの金額を足して国が定めた基準額を超えると、年金の減額が始まる仕組みである。 

 年金を減額するかどうかの基準額は、65歳未満の場合には28万円であり、昨年度と今年度とで変更はない。しかしながら、65歳以上の場合の基準額は、昨年度が47万円であったのに対し今年度は46万円とされ、昨年度よりも基準額が1万円引き下げられている。つまり、65歳以上で年金をもらいながら社会保険に加入して勤務している場合には、昨年度よりも年金が減額されやすくなったことになる。

 65歳以上で社会保険に加入して勤務する立場の人といえば、一般的には企業の経営者層が該当するケースが多いであろう。つまり、企業の経営者、役員クラスについては、役員報酬が従前と変わらないにもかかわらず、昨年度よりも年金の受取額が減る可能性があるわけである。

 

◆基準額を超えると、超えた額の半額に相当する年金がカット

 たとえば、65歳の企業経営者が前述の「1ヵ月の年金額」「1ヵ月の報酬額」「過去1年間に支給された賞与を12で割った額」の合計額を、昨年度までの年金減額の基準額である47万円ちょうどに調整していたとする。この場合、昨年度であれば基準額をオーバーしていないので、年金は全額受け取ることができた。

 しかしながら、今年度の基準額である46万円に照らし合わせると、基準額を1万円超過することになるので、超過した1万円の半額である5千円が毎月の年金から差し引かれてしまう。月に5千円といえばわずかな金額にも思えるが、年間に換算すると5千円×12カ月=6万円となり、無視できない金額になる。中には、年金のわずかな減額であったとしても「年金をカットされること自体が、どうにも我慢ならない」という方もいる。

 国の年金は原則として偶数月の中旬に支払われる。今年度の年金が最初に支払われるのは6月の中旬であり、このときに4月分と5月分の年金が入金になる。もしも年金の減額基準変更が年金の受取額に影響するとすれば、この6月入金分の年金からということになる。

 

◆役員報酬の変更は専門家と協議のうえで

 従って、少しでも年金減額を避けたい事情があるのであれば、役員報酬の変更も検討すべき選択肢の一つといえる。もちろん、年金の減額具合を調整するために役員報酬の額を見直すというのは、企業経営の本質からは外れる行為かもしれない。しかしながら、中・小規模企業を経営する経営者や役員層の場合には、「少しでも支出を避け、わずかでも収入を増やしたい」という懐事情を抱えている方も少なくない。

 ただし、実際の年金減額の計算はもっと複雑である。また、年金減額の基準額が1年後に再度見直される可能性もある。さらには、期の途中で役員報酬を変更する際の税務上の影響も考慮したほうがよい。従って、もしも役員報酬の額を変更するのであれば、年金法や税法の専門家とよく協議のうえで、取り組むことが賢明である。

 

 

プロフィール

psr ohsuka
マネジメントコンサルタント、中小企業診断士、特定社会保険労務士 大須賀 信敬
コンサルティングハウス プライオ(http://ch-plyo.net)代表
「ヒトにかかわる法律上・法律外の問題解決」をテーマに、さまざまな組織の「人的資源管理コンサルティング」に携わっています。「年金分野」に強く、年金制度運営団体等で数多くの年金研修を担当しています。

 

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