HOME 専門家の知恵 就業規則・労務問題 【専門家の知恵】労働者側から損害賠償を請求されたとき、企業はどう対処するか《下》

【専門家の知恵】労働者側から損害賠償を請求されたとき、企業はどう対処するか《下》

 労働者側から損害賠償を請求されたとき、企業はどう対処するか《下》

<つまこい法律事務所・弁護士 佐久間 大輔>

 

 メンタルヘルス不調や過労死により労働者や遺族から損害賠償請求を受けたときは、早期に過労死の原因を調査することが重要だ。初動が遅れると、企業の対応に関する二次クレームが発生する。労働者側の請求に理由があれば、企業としては陳謝し、示談の申し入れをすることになる。争う事案であっても、裁判の影響を考慮して方針を慎重に検討することが望ましい。

 

◆労働者側請求対応における初動の重要性

 労働者や遺族が損害賠償請求をしてきたとき、これを放置していても解決するわけではない。消極的な対応姿勢が労働者側に伝わると、企業の対応の不満に起因する「二次クレーム」が発生し、裁判に発展する可能性が高まる。

 そのため、人事労務担当者としては、積極的に労働者側からの請求と向き合わなければならない。そうでないと、労働者側の真意を測ることができなくなる。真意や事実の認識に誤りがあると解決方針を見誤るばかりでなく、適時に対応することができず、結果的に労働者側の不満が増大することになる。

 初動において、労働者側の真意を汲み取りつつ、早期に事実の確認、病気や死亡の原因に関する調査を開始すべきである。調査の結果が出たら労働者側に対して早期に報告すべきだ。このとき、決して事実の隠蔽や虚偽報告をしてはならない。

 特に労働者が死亡した場合、その遺族は精神的な苦痛を受けるとともに、何が原因であったのかを知りたいという気持ちが強くなる。それなのに調査拒否をすると感情悪化につながるし、調査をしても不十分な結果では不満が募り、企業の対応に関する「二次クレーム」が発生する。

 このように初期対応を迅速に行うことが重要だ。初動が遅れると、解決に時間がかかることになるし、対応の遅延自体が「二次クレーム」となるおそれがある。

 初期対応が遅れたのであれば陳謝することを躊躇しない方がよい。陳謝したからといって法的な責任が直ちに発生するというわけではないので、陳謝すべき内容を明確にした上で陳謝した方が、被害感情が和らぎ、解決に結びつくことがある。

 適切な対応をすればいつかは解決することができる。このことを念頭に置いて対応することが肝要だ。

 

◆労働者側請求対応の解決方針

 事実調査の結果、メンタルヘルス不調や過労死が業務によるストレスに起因するのであれば、労働者や遺族の損害賠償請求には正当な理由があったことになるので、企業としては陳謝することになる。逆に労働者側の請求に理由がないと判明したのであれば争うことになろう。
 
 この「陳謝する事案」か、それとも「争う事案」かという企業責任の有無を決めるのだが、調査結果が判明したら、労働者側の心情を理解しつつ、裁判に至った場合の影響を予測し、早期に方針を決めることが肝要である。

 「陳謝する事案」であれば、早期に情報を開示して、労働者側の真意を汲みつつ、損害賠償をする方針で申し入れをした方がよく、企業として誠意のある解決案を示すべきだろう。

 「争う事案」でも、裁判になると企業のイメージダウンにより売上げの低下に影響するといった観点から、見舞金や解決金を支払うとの示談を申し入れる等の対応策を検討することが必要だ。

 示談交渉や裁判となり、紛争に発展した段階では、「信頼」というだけでなく、危機管理と企業防衛という視点を取り込んで検討しなければならない。その場合でも、反論の時期や表現によっては労働者や遺族の被害感情が悪化することがあるので、留意されたい。

企業としては迅速な対応を第一とすべきだが、だからといって企業が解決を急ぎすぎると、その内容が企業側にとって不利なものとなることがあるので、弁護士に助言を求めるなどして慎重な検討をした方がよい。

 人事労務担当者は交渉のプロではないので、弁護士に交渉を委任することも検討した方がよいだろう。

 

 

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つまこい法律事務所・弁護士https://mentalhealth-tsumakoilaw.com/
弁護士 佐久間 大輔
労災・過労死事件を中心に、労働事件、一般民事事件を扱う。近年は、メンタルヘルス対策やハラスメント防止対策などの予防にも注力しており、社会保険労務士会の支部や自主研究会で講演の依頼を受けている。日本労働法学会・日本産業ストレス学会所属。著作は、「過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方」(労働開発研究会、2014年)、「長時間労働対策の実務 いま取り組むべき働き方改革へのアプローチ」(共著、労務行政、2017年)など多数。

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