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【専門家の知恵】労基法改正のこころは

労基法改正のこころは

<オフィス クロノス 久保 照子/PSR会員>

 

  5月31日に働き方改革関連法案が衆院を通過し、法案成立がほぼ確定となった。

 今回の改正は大がかりだ。 主に7つの法律、雇用対策法、労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正が同時に行われるもの。

 とりわけ注目されるのは70年ぶりの大改革の労働基準法。 改正についてはいろいろと批判的な声も聞く。 注目の改正の中でも36条は影響が大きいと思う。

 改正のこころはどこにあるのだろうか。

 


◆労働力人口が減っていくという大問題

 耳たこの ”日本はOECD加盟主要7か国中最下位“という生産性の現状。 週労働時間49時間以上の労働者割合をみると、ドイツは10.1%、日本は21.3%である。 焦土と化した国土から目覚ましい復興を果たした両国であるが、、2倍違う。

 働き方の過去から未来をイメージするに分かりやすい資料がある。2008年発表の 経済同友会“21世紀の労働市場と働き方委員会”の提言、である。 経済同友会のHPで公開されている。 昭和の時代、現在、将来の働き方を図解している。

 それによると、昭和の働き方を古いOS(三種の神器)=年功序列、終身雇用、企業内労働組合の上に新卒一括採用、正社員囲い込みなどのアプリで動いていたとし、新しいOS(新・三種の神器)=職務・役割主義、人財主義、多様性主義としている。 ビジョンは「ワーク&ライフインテグレーション」。ワークとライフが相乗効果を発揮する働き方だ。

 現在は旧OSから新OSへと移行する試行錯誤の時期。故にミスマッチが起きている。 人口増加、大量生産、大量消費の成功を支えた長時間労働。ラッキーだった。

 将来のビジョンをめざす働き方改革の背景にある問題は労働力人口の減少だ。 過去の成功を支えた人口増加だが、減少まっしぐら。 2018年4月時点で約7800万人。 それが少子高齢化の進行で2065年には約4500万人になると予測されている。

 ただ減るばかりではない。 高齢者の割合も減少はするが、2065年には総人口の38%を占める。

 成長率1.5%~2%維持には、人口1億人・生産性を世界トップレベルにあげなければならない。 生産性トップ10は、アイルランド、ルクセンブルク、ノルウェー、ベルギー、デンマーク、米国、オランダ、ドイツ、フランス、スイスである(出典 日本生産性本部、日本の生産性の動向2017年版)。

 健康で、誰もが働くことができ、制限された時間内で如何に集中的に働くかが重要になる。様々な昔のやり方を変える必要がある。

 残業を無くすなんて無理だ、という企業も当然ある。 しかし、人手不足の中、努力、アピールをしない企業に、今人は集まるだろうか。ワクワクするだろうか。 

 政府も様々なアピール手段を用意している。 女性活躍を支援するえるぼし認定、若者支援のユースエール認定などの取得で企業名を公表できる。 メリットある認定なのだろうかという疑問があるかもしれない。 しかし、同業他社がやっていたら、求職者はどちらを魅力的に思うだろうか。 他にも生産性・収益力向上の取り組み、生産性向上に向けた事例などを公表し、生産性向上の後押しをしている。

 忙しくて対策を練る時間がない、わからないと言っているうちに、波の間に間に消える運命になりかねない。 働く者も、生産性の低い働き方の方はご遠慮していただくということになっていく。 企業と個人は緊張感のあるパートナーの関係になっていくだろう。

 


◆自社のビジョンを描こう

 今のままの出生率が続くと、日本人は3000年には朱鷺になる、と国立社会保障・人口問題研究所所長の森田 朗氏は推測している。 

 1000年後には絶滅? とはいえ、今を何とかしなければならぬ私達は、どうしたらよいのだろうか。 因みに彼の結論は“子孫を増やす”。

 できそうにないことを、できるに変えるにはビジョンを描くことが重要だ。 まず、できる、と思うこと。 さらに、自社の働き方改革は世の中にも影響を及ぼすのだ、位の志が大切だ。 自社のビジョンが1000年後の朱鷺化に影響を与える。 

 とは言え現状は問題だらけのはず。そこで、ビジョンという理想と現実のギャップを明らかにする作業が必要になる。 課題の発見である。 そして解決策を行動に移す。 中長期の計画を絡めて、具体的な行動に落とし込んでいく。

 自社らしいビジョンを描く。 例えば、働く時間を選択し、家族や大切な人との時間を持つ豊かさがある。 家族を増やすチャンスも多い。 大切な人がいるおかげで、また元気に働くことができる。 喜びや悲しみを分かち合える時間を持つことでリフレッシュして仕事ができる。 家族への愛、友人への心配りが新しい商品やサービスを生む。 ワークとライフの相乗効果だ。 

 改正のこころを、そうとらえたい。

 企業と個人の関係、男女の関係、家族の関係、様々なものの再定義が、今を明らかにする。

 課題は乗り越えるためにある、を信じて前に進もう。

 

 

 

プロフィール

sharoushi chie
人材育成コンサルタント 社会保険労務士 久保 照子
オフィス クロノス

 

 

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