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【専門家の知恵】人ごとでない「パワハラ問題」を考える

人ごとでない「パワハラ問題」を考える

<社会保険労務士たきもと事務所 瀧本 旭/PSR会員>

 

◆はじめに

「このハゲー!!」

 すっかりお馴染み某国会議員の発言である。

 近年“パワーハラスメント“に関して世間に浸透してきたが、この発言により大きな注目を浴びたのは間違いないだろう。

 今回の事件?をきっかけとして、仕返しのため「自分も録画・録音しよう!」と考えた人もいるだろう。

 トラブル予防のため、今一度パワーハラスメント(以下、パワハラ)とは何か、どんな問題があるかについて考えてみたいと思う。

 

◆パワハラとは

 厚生労働省は、職場のパワハラについて、以下のように定義している。

 ※同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

 また、次の6類型が典型例である。
 ・身体的な攻撃
  e.g.)暴行・傷害
 ・精神的な攻撃
  e.g.)脅迫・名誉毀損・侮辱・暴言
 ・人間関係からの切り離し
  e.g.)無視・隔離
 ・過大な要求
  e.g.)業務上明らかに不必要・不可能なことの強制・強要、妨害
 ・過小な要求
  e.g.)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
 ・個の侵害
  e.g.)私的なことに過度に立ち入ること
 厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」より

 

◆何が問題だったか

 前述の定義と照らし合わせると、某国会議員の発言等を整理すると、それぞれ下記に該当するのではないか。
 ・身体的な攻撃 →「運転中の暴力」
 ・精神的な攻撃 →「容姿の非難」「大声での恫喝した」

 その他、「過大な要求」もあったのかもしれない。

 いずれにせよ、今回の事例は「指導」の範疇を超えており、パワハラ行為と言えるだろう。

 パワハラと認定されると、加害者は、民法上の不法行為責任を負い、被害者に対して損害賠償義務を負う。(民法709条)。

 もちろん、暴行や強制わいせつなどを行っていれば、刑法上の暴行罪や強制わいせつ罪等に問われることもある。

 また、企業は加害者の使用者として、加害者と同じ損害賠償義務を負うこともある。(使用者責任)

 このように、いったんパワハラ事案が発生してしまうと、被害者はもちろんのこと、全従業員・職場全体の士気の低下も免れない。そして、生産性の低下、採用難の時代だからこそ優秀な人材の流出等その影響は計り知れない。

 しかも、その解決には多大な時間・労力・費用を要する。

 


◆今回の教訓

 報道されている内容からは、発言は状況等の実態はわからない。

 冒頭の発言のきっかけが、当該秘書の職務能力に問題があったのかもしれない。某議員が求めている能力と当該秘書の能力に著しい乖離があったのかもしれない。また、某議員は単に「指導」をしたつもりだっただけかもしれない。

 今回の騒動で改めて感じたことは、上司と部下、まして社長と従業員の考えが完全に一致することはありえないということだ。

 「指導」の心持ちが部下の育成なのか、意に沿わない部下の説教なのか、結果は全く異なるはずだ。(今回の事例は後者と思われる)

 部下の育成のためにやる気を引き出す。またそれが、上司の最大の仕事ではないか。であれば、基本的な考えに違いがあっても、行動を注意し改めさせるだけでいいだろう。部下に対してそのような心持でいれば、「指導」が「パワハラだ!」なんて言われることはないはずだ。

 

 

プロフィール

par takimoto
社会保険労務士たきもと事務所(http://www.takimotolmo-sr.com/)代表
社会保険労務士 瀧本 旭
「経営者を守り、会社を元気に!」するため、日々奔走中。

 

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