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【専門家の知恵】「育休取ると会社への好感度アップ!?」

「育休取ると会社への好感度アップ!?」

<熊谷経営労務パートナーズ 熊谷 篤/PSR会員>

 

◆「イクメン」は増えているが男性の育休取得が増えない理由は会社にあった!?

 最近は「イクメン」という言葉もよく聞くようになり、男性の育児参加が一般的になってきているように思う。

 そして、男性の育児休業も注目されてきている。

 しかし、2015年度の雇用均等基本調査によると女性の育児休業取得率は81.5%だが、男性は2.65%であった。この2.65%という数値は男女差で見ると本当に比べることのできないような低いレベルだが、これまで最も高かった11年度の2.63%を更新し過去最高を記録したのだ。そうだとしても男性の育休取得率を20年度までに13%に引き上げるとする政府目標には遠く及ばず、低水準にとどまっているというのが現状だ。

 一方、2014年発表の連合調査によると、育児休業を取得した男性は5.7%だが、若い世代ほど育休を取得したい(またはしたかった)という要望が高いようだ。子どものいる20代の男性のうち、「取得した」が13.9%、「育児休業を取得したことはないが取得したかった」が58.3%となり、子どもがいない20代の男性では、「取得したいが取得できると思う」27.3%、「取得したいが取得できないと思う」51.9%と、実に8割近くが取得意向を持っている。しかし、「自分の職場で、男性の子育てに対し最も理解があると感じるのは誰か」との質問には、「職場には誰もいない」との回答が45.1%となり、半数近くが職場には男性の子育てに理解がある人がいないと答えている。男性社員の育休取得や育児参加等に関するパタニティーハラスメント(パタハラ)も、「職場でパタハラをされた経験がある」が 11.6% 、「周囲でパタハラにあった人がいる」が10.8%となっている。なお、17年1月1日の法改正でマタハラ、パタハラを防止する措置が事業主に義務付けられた。

 つまり、若い世代を中心に男性の育休取得、育児参画意欲は高まっており、それを促進するような公的な制度も整っているのだが、ブレーキとなっているのは会社の風土であり、職場の理解ということが言えそうだ。これをどのように改善したらよいのか、また、男性の育児休業取得が組織にどのような成果をもたらすのかを考えるうえで面白いデータが出てきた。

 

◆育児休業を取った男性は会社への好感度が高まり、転職を考えにくくなる。

 内閣府の経済社会総合研究所の調査で、こんな傾向が浮かび上がってきた。担当者は「自分を大事にしてくれていると感じたのではないか」とし、育休が企業側にも退職防止の面でプラスになっていると分析している。

 調査は昨年11月、2011年からの5年間に第1子が生まれた20~59歳の男性5,721人を対象にネットで実施。育休を取得した人は8.2%の469人、取得しなかった人は91.8%の5,252人であった。

 子どもが1歳になったときの意識について妊娠判明時との違いを尋ねたところ、「会社への好感度が強まった」と答えたのは育休を取らなかった人では5.0%。これが取った人では17.1%に上がった。「転職への関心が強まった」は取らなかった人で14.6%だったのに対し、取った人は10.7%であった。

 この結果からも育休を取得した男性社員は取得しなかった、あるいは取得できなかった社員よりも会社への好感度は高く転職を考えにくいという傾向であるということは明らかである。

 事実、「イクメン企業アワード2015」特別奨励賞受賞に選ばれた「東京急行電鉄株式会社」では、育児休業の有給化(最大 43 日間)や、「イクメンセミナー」など男性の育児休業・育児参画促進の取組により男性の育児休業取得者が増加し、直近3年間に入社した総合職の離職率は0%だったというデータも出ている。

 これらのことから男性の育休取得は企業、当人、その他あらゆる関係者にとってもロスではないと思う。モチベーションアップや組織への貢献意欲の高まり、仕事の効率化、組織の生産性向上、女性活躍への深い理解など様々なメリットがある。

 また意外と知られていないが企業側からしてみれば助成金取得というメリットもある。政府は平成28年度から、男性の育児休業取得者が出た企業に対する両立支援等助成金として「出生時両立支援コース」を設けた。配偶者の出産から8週間以内に中小企業で5日以上、大企業で2週間以上の育休を取ることが条件で一年度において1事業主当たり1人までだが取得者が出れば中小企業は57万円、大企業は28.5万円を支給される。特に中小企業にとっては大きなメリットだ。

 唯一デメリットを挙げるとすれば、男性の育休取得がしやすい環境を整えていない会社の中にいるその同僚に大幅な負担がいくことであろう。誰かが育休を取得すればその誰かに近い者にしわ寄せがいく。このような社内風土の下では育休取得が進むわけもなく、それに伴い徐々にではあるが離職者も増えていくことになるのではないだろうか?

「2015年イクメン企業アワード大賞」に選ばれた社会福祉法人桔梗会は「チームとして仕事ができるよう中堅職員の仕事を分散し、特定の職員が不在の場合であっても仕事が滞らないような仕組みを構築」した結果、2010年以降は男性育休取得率100%を継続して達成し離職率も大幅に改善しているという。

 優秀な社員が定着しない理由は、ひょっとしたらこういった社員一人一人の生き方を尊重し、応援をしていくような意思表示を見せない会社側の姿勢にあるのかもしれない。

 社員のためを思って必死で会社を大きくしてきたが、肝心の社員からの好感度がなかなか上がらないと思ったあなたの会社にも、男性の育休取得の制度を導入し「子供が産まれたら育休を取るのが当然」という会社の風土にしてみたら、今よりもっともっと働きやすい人が集まってくる会社になるのかもしれない。

 あなたの会社の「働き方改革」・・・。

 まずはここから始めてみてはどうだろうか?

 

 

プロフィール

psr kumagai
社会保険労務士 熊谷 篤
熊谷経営労務パートナーズ(http://ak-sr.jp)
愛知教育大学卒業。生まれも育ちも豊川市。豊川市大好きです。自動車販売業界で14年間従事した経験を生かし、数少ない「自動車業界専門」の社労士として、採用・教育・労務管理などの面から業界の発展に貢献いたします。

 

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