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【専門家の知恵】働きやすさの「見える化」(6)健康経営で社員も会社も元気になる

働きやすさの「見える化」(6)健康経営で社員も会社も元気になる

<社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 楚山 和司/PSR会員>

 

◆国・自治体や民間団体の支援策を有効活用~健康経営の総仕上げ~

 前回までの記事において、健康経営が求められる背景やその概要、具体的な業種や職種にあわせた実践例、対策にあたり特に高度な専門性を要するメンタルヘルスケアと感染症予防、といったトピックについて解説してきた。

 これらをふまえ、健康課題の抽出・分析、経営計画・方針への位置づけ(マネジメント層の理解と関与)、産業医をはじめとした産業保健スタッフ等による社内の体制づくり、そしてそれらの評価・反省・情報発信といったPDCAサイクルを循環させていくことが、健康経営の一般的なフローである。

 しかしながら、連載当初でふれたようにあくまで健康経営は【健康+経営】もしくは【健康×経営】すなわち、健康への取り組みが経営に資する、相乗効果を生む、といった経営的な視点が欠かせない。

 そのうえで、大企業に比べ相対的に経営資源が限られがちな中小企業にとって、必ずしも社内リソースだけですべての取り組みを賄えるとは限らない。

 また、せっかく健康課題を抽出・分析し、解決のための計画を立案したとしても、いざ実行するための人的・金銭的コストが壁となり、健康経営そのものの広がりが阻害されてしまうケースも想定される。

 そこで最終回の本稿では、視点を社内から社外へと移し、そうした人的・金銭的コストを軽減、もしくは健康経営の取り組みを客観的に評価する仕組みについて解説していく。

 まずは厚生労働省都道府県労働局所管の助成金のうち、健康経営に資するものを例示する(詳しい受給要件は当局へ要照会のこと)。

1)職場意識改善助成金
…いくつかのコースに分かれており、労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、または最近注目されている勤務間インターバルやテレワークの導入等に要した経費について助成するもの。上限額は個々のコースごとに異なるが、いずれも所要経費の最大3/4が助成される。

2)職場定着支援助成金
…雇用管理制度助成コースにおいて、法定外検診または法定外検診項目の受診の制度化について助成するもの。制度化にあたっては10万円、さらに離職率や生産性の改善につき一定の要件を満たせば72万円が助成される。

3)キャリアアップ助成金
…健康診断制度コースにおいて、有期契約労働者等法定対象外の労働者への健康診断の制度化・適用について助成するもの。制度化・適用にあたっては38万円、さらに生産性の改善につき一定の要件を満たせば10万円が助成される。

 また、健康経営に取り組む法人向けに、金融機関や信用保証協会による低利融資や保証料の優遇等のインセンティブが日本各地に広がりを見せているほか、自治体においてもその取り組みの水準を認定・顕彰する動きが活発になっている(下表参照)。

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 このほかにも、全国健康保険協会では生活習慣病予防健診や特定保健指導等の一部費用負担、地域産業保健センターでは産業医選任義務のない常用労働者数50人未満の事業場における産業保健活動の助言・相談、中央労働災害防止協会ではメンタルヘルスケアや健康づくりのための各種セミナーや講師派遣を行っている。

 繰り返すが、健康経営とは一口に言えば「従業員の健康管理を『経営的な視点』から考え『戦略的に実践』すること」だった。

 最終的には経営戦略に落とし込んでこそ、日々の事業活動の中に根づき、息づき、やがて将来の成長となって実を結ぶのである。

 日本経済が直面している問題のうち、喫緊のテーマのひとつは持続可能な社会保障制度だろう。

 この極めて困難かつ深刻な問題を解決するためには、一部の大企業もしくは志高い中小企業だけが取り組むだけでは、早晩息切れしてしまいかねない。

 真に解決の道筋を切り拓くのは、日本全国個々の企業が少しずつでも健康経営に取り組み、それを端緒として来るべき少子“超”高齢社会に適合した企業体質へと一歩を踏み出すことではないだろうか。

 結びの言葉として、イギリスの経済学者ウィリアム=ペティの格言で締めくくる。

 ―――健康は労働から生まれ、満足は健康から生まれる。

※1 本稿の記述はすべて執筆時点での情報です。実際の利活用(特に助成金)にあたっては、必ず各事業主体まで改廃等ご確認をお願いいたします。

※2「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です

 

 

プロフィール

psr soyama
社会保険労務士・健康経営アドバイザー 楚山 和司
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー (http://www.shk-partner.jp/)
開成高校・早大卒。経済産業省「健康経営優良法人」や厚生労働省「安全衛生優良企業」の認定支援、全国社会保険労務士会連合会・JIPDEC「経営労務診断」等を通じた、働きやすさの「見える化」に貢献します。

 

 

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